こじれた俺の愛し方
「ナツ、家に着いた。食事はどうだ?」

 俺が家のベッドにナツを降ろしながらそう尋ねると、ナツは震えながら答える。

「…ご飯は…平気です…」

 俺はそれを聞いて頷き、ナツの寝る支度のために離れようとすると、ナツはすぐに俺に追いすがった。

「すぐそばにいて、手を握っていて…一人は、怖いです…!」

 そうは言われても、ずっとそばにいたのではナツに着せられそうな着替えを持って来ることも、せめて飲み物を持ってくることもできない。

 何より、触れたナツに対しての自分の衝動を抑えていられるかどうか…

 しかし俺は覚悟を決めて、ベッドに寝そべるナツの手をそっと握る。

「…テイキさんの手、あったかい…」

 ナツの目を閉じたその安堵の表情に、一筋涙がこぼれた。

 なぜ今ナツはこんなに穏やかな表情でいられるのだろう?
 まだ聞くことはできていないが、何か恐ろしい目に遭って、わざわざ俺を頼って自分の家から離れた俺の職場まで…

「…テイキさんがいてくれて、良かった…」

 ナツに逃げられたくない。
 その思いは今も変わらない。しかし、それ以上の不思議な気分にさせてくるナツを、俺は何も言わずに見つめていた。
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