こじれた俺の愛し方

強引な男

 ナツが両親と暮らしていた一軒家まで二人でやってくると、玄関の前に男が立っていた。

 スーツを着込んだ良い身なりで、いかにも会社の重役といった風だった。

「…シンドウさん…」

 ナツが小さく名前を口にする。

 コイツか。
 俺のナツを奪おうとしているのは…

「なっちゃん…!ここ数日は姿を見せてくれず、心配をしたよ。部下を学校に迎えに行かせても、いなかったと言うしね。…僕と暮らすこと、考えてくれたかな?」

 シンドウと呼ばれた男の、とても穏やかな声。
 しかしこんな男、裏で何を考えているかわかったものじゃない。

「…誰かな?その彼は。」

 男は間を置き、俺を見てからナツにそう問いかける。
 その一瞬見せた表情はいかにも怪訝そうなものだった。

「…わ、私の…彼です…。シンドウさん、あの…何度もお断りしていますが、私……」

 ナツは明らかに怯えている。

「そうか、恋人がいたのか…。しかし、第一に説得の際に出されるはずの彼を、なっちゃんは出さなかった。誇れない恋人ほど信用出来ないものは、ないのではないかな?」

 これは明らかに俺に対しての当てつけだ。

 男は怯えるナツのイメージを払拭するかのように爽やかな笑顔でそう言い、こちらに向かってくる。
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