こじれた俺の愛し方

彼女を見ていられれば…

「あのっ…こんばんは…。前にお会いした…。最近、よく私のいるコンビニに、来てくださいますよね…」

 ある日、駅の近くで仕事帰りの俺に声を掛けてきたのは紛れもなく、あの彼女だった。

「ああ」

 俺は素っ気ないふり。
 期待なんかしたって、どうせ無駄だから…

「…あ、ごめんなさい…」

 彼女は突然謝り、早足で立ち去ろうとした。

 俺のあの態度に、話し掛けられたくないのだろうと思ったのか。

 彼女にいま逃げられたくない…

 俺は彼女を引き留めようと急いで声を掛ける。

「っ…悪い、ぼーっとしてた。…頑張ってるよな。あそこで働いてたのか」

 平然だけは装う。
 彼女はようやく恐る恐る振り返った。

「…今からバイト?」

 俺の質問に、彼女はやっと安心したらしく穏やかに笑った。

「えっと…はい、家から近いところにと思ってここに最近…。いま学校から帰ってきたところなので、これからアルバイトです…」

 彼女のこの話し方は、怯えているわけではなく癖らしい。

 恥ずかしがりなのかたまにする彼女のたどたどしい喋りが、何とも言えず俺の嗜虐心(しぎゃくしん)のようなものを煽る。

 …この駅は彼女の家からも近いのか。

 学校帰りだと言った彼女をよく見ると、彼女の格好は白ブラウスに膝丈のレモン色のスカート。茶色のリュック型バッグ。それに白のスニーカー。
 制服ではなかった。

 この辺に制服の無い高校は無かったはず…
 もしかして彼女は、低い背の大人びていないこの顔にして、大学生だったか…?

 俺は彼女の年齢を勘違いしていたのかもしれない。
< 6 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop