こじれた俺の愛し方

彼女に降り掛かったある災難

 ある日、俺が夜に彼女のバイト先であるコンビニにやってきたときのこと。

「あ、あのっ…困ります……」

 レジ前で下を向き立ち尽くす彼女。
 目の前にはふらつきながら彼女に詰め寄る客だ。

「…だからさ、レジ袋じゃねえんだから代金は良いだろうが。俺はこのアイスを、その紙のでいいから入れろって言ってんの。分かる?ボンヤリ姉ちゃん…」

 見るからに酔ったオヤジが、訳の分からないことを言って彼女に絡んでいる。

 …何で誰も見ていないんだ、こんな時に…!

 俺はためらうことなくレジに向かい、その客の横に立って言った。

「…あのさ、店員さんが困ってるでしょう?諦めたらどう?」

「…!」

 彼女は俺に気付くが、もうすでに泣きそうで目に涙をためている。

「んだと、おい…!」

 絡まれかけた俺の中で、何かが目覚めた気がした。

 …ふざけるな、彼女を俺の前で泣かせるなんて…!!

 酔った客を今までに無いほどギリッと睨みつける。まるで自分の目から火花が散りそうなほどだった。

「…おい…警察呼ばれたいか…?彼女に詰め寄ってたの、監視カメラに映ってるはずだけど。アンタ、それでも言い逃れできるのかよ…」

 今までに無いほどの怒りの、低い俺の声。
 それが人のいない店内に響いた。

 他人を拒絶していたはずの俺は、その時初めて人を庇ったのだった。
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