優しく、そっと、抱きしめて。

小さな恋

 それから数日、一週間と過ぎても、宮山くんとは話すことなく、講義室で会っても挨拶すらない。避けているわけでも避けられているわけでもないが、宮山くんはいつも誰かといて、誰かと話しているため、私から話かける勇気もなく、そのまま時間が過ぎ去っていった。

 友達だと言ってくれたあの日はただ浮かれていたが、こうも話すことなく日々が過ぎ去っていくと、きっとその場凌ぎで発した、やさしさからの言葉だったのだと思い知る。カフェに行って少し話してみようかな、とも思ったものの、私から押しかけて迷惑ではないか、と考えているうちに、時間が過ぎ去っていき、とうとうタイミングを逃して、現在に至る。

 「夢だったんだろうなぁ、うん。きっとそう」

 今日も一人寂しく中庭のベンチでコンビニのサンドイッチを食べて一息つく。周りには誰もおらず、少し離れた場所では、友人同士楽しそうに笑い声を上げている人の声が耳に届く。天気は晴天。綺麗な青空に、緑の葉を身に纏った木々。寒すぎない心地の良い風。そんな中、一人サンドイッチをいただくのも悪くはない、と足元を見つめながら思っていたところに、目の前に影が落ちる。

 なんだろう、と見上げると、あの、宮山くんがこちらを見下ろすように立っている。

< 13 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop