優しく、そっと、抱きしめて。
 それから、友人に相談してみたものの、そんなラッキーなことある?付き合っちゃいなよ、と言われ、先輩に言われた通り、付き合ってから好きになることなんてよくある話だよ、と言いくるめられ、結局先輩と付き合うことになった。

 最初のうちは、付き合ってどうしようという不安でいっぱいだったものの、思いのほかいつもと変わらず、たまに先輩と一緒に帰るくらいで、困ることはなかった。

 一緒に下校しているときに先輩から手をつないできて、「つなぐのはあり……?」と心配そうに私に確認して、「大丈夫です」と微笑み返すと、嬉しそうに頬を染めて、やったと喜ぶ先輩がかわいいと思ったり、私の好きなところを何個も上げて、楽しそうに話す先輩に、褒められて恥ずかしさもあったが、うれしいという気持ちのほうが大きく、楽しそうにしている先輩を見て、私も楽しかった。

 このまま好きになれたらいいのに。
 いつしかそう思いながら、先輩の横に並んでいた。

 きっと私が先輩を好きになっていたら、こんなことになってなかったのに、そう思うような出来事が二年生になった5月に起こる。
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