優しく、そっと、抱きしめて。
 お風呂から出ると、すぐに先輩からメッセージが来て、そこでも私の意見は聞かず、「明日、11時に」と先輩の家の住所が送られてくる。徒歩20分ほどの距離であることを確認して、私は明日の用意を済ませ、すぐに就寝した。

 それから朝になると、朝食を軽く済ませ、親には友達の家に遊びに行ってくる、と伝え、身なりに気合を入れすぎると、母親にデートだと思われそうで、ほんのり薄い化粧と、服装もかわいらしい花柄のフレアワンピースを身にまとい、家を出る。

 先輩の家に近くなると、メッセージでもう少しでつく、と伝え、先輩が家から私を出迎えに出てきてくれた。

 普段は制服姿や学校指定のジャージくらいしか見ていなかったため、初めて見る先輩のラフな格好に思わず目を奪われる。いつもセットしている髪の毛も今日はセットされておらず、ナチュラルな髪形をしている。

 「いらっしゃい、どうぞ。あ、先二階上がってて?階段上ってすぐ左の部屋ね」
 「あ、はい、お邪魔します……」

 先輩のご両親に会ったらどうしよう、と思っていたが、先輩の家は静かで、不審に思いながらも教えてもらった通り階段を上がり、先に部屋に入る。

 ベッドと机と本棚、と必要最小限の家具。家具自体もシンプルなデザインで、同じ高校生とは思えないほど落ち着いた部屋をしている。本も教材や難しそうな本ばかりで、漫画や小説は一切置かれていない。そわそわしながら待っていると、先輩は飲み物を片手に部屋に入ってきた。
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