逃げる婚約者と追う私

Ⅱ凜音Side 流愛との出会い

初めて流愛に会った時、死ぬかと思った。
茶髪で毛先がくるくるのポニーテールに、明るい笑顔で………ほんとに綺麗だった。こんな子見たことないってくらい。




流愛との初めての会話は最悪だった。恥ずかしさのあまり、差し出してくれた手も取らずに名乗っただけで自分の部屋に籠もってしまった。一番の失態だ。ほんとだったらあそこで「よろしく、流愛。」って言って握手したかった…!!
多分俺の第一印象、最悪だっただろうな……。流愛に嫌われてないかが心配だ。あんな態度とってごめんな、流愛。可愛すぎる流愛も悪いからな……っ!絶対自覚してないだろうけど。




その後、俺は部屋に閉じ籠もってしまった。それにもかかわらず、流愛は夜ご飯の誘いまでしてくれんたんだ。どんだけ優しいんだよ、流愛。普通だったらこんなやつほっとくだろうに。初めは顔合わせて食事とか絶対無理……!と思い断ったが、流愛の悲しげな顔を想像した瞬間、それは駄目だ!!と自覚したから作ってもらうことにした。正直楽しみすぎてじっとしてらんなかった。ハンバーグとか子供っぽ過ぎたかもしんないし、やっぱり返事が素っ気なさ過ぎたかな……とかいっぱい後悔した……。もっと優しくできねーのかな、俺。





そうやって悩んでるうちに流愛がまたノックしてきた。また冷たい受け答えしちゃったし……。何やってんだよ、俺!!ドアを開けると不安そうな目をした流愛がいて、それでも俺に笑いかけてくれた。正直死にそう。何だこの可愛い生き物……!




最初流愛はやっぱり不安そうに俺が食べてんのを見てた。卵が入ってたのはしょーじきやられた。めっちゃ間抜けな顔してたんだろーな……恥ず。




しばらくして、流愛のハンバーグが丸焦げなのに気づき、言ってみたら返ってきた答えは色づきがいいだけ、とのこと。あははははは!!ははは、ふぅー……まじでおもしろ。ずっと笑ってたらジト目で睨んできて、それも可愛かっなぁ。

だが。このあと俺は重大なミスをしてしまう。流愛に対して怒鳴ってしまうのだ。一瞬で部屋の空気が凍りついたのがわかった。まじなにやってんだ俺!!!!流愛の笑顔が可愛すぎて恥ずいからって怒鳴るのは許されることじゃ無いだろ…!!ほんと最悪…最低……。クズだな俺……。俺、ここまでいいとこ一つもないじゃん…………。
嫌われた………!!絶対嫌われたじゃん……!!めっちゃ流愛傷ついた顔してたじゃん……!!もうほんと最低すぎる……ごめん……流愛……。まじごめん……。でもさすがに謝んないままは良くないし……でも会いに行くのも気まずいし……あ、手紙にするか。
ってことで張り紙をしたんだけど……気づいてくれたかな、流愛。ごめんな、こんな謝り方しかできなくて……。許してくれ……!!!!!



それから俺は流愛のことを避けた。やっぱり、あんなことしたから気まずいし……。流愛は話しかけようとしてくるだけど、俺は一切受け付けず、順位に関することしか話さなかった。なにか進展があるかもと思ってたイベントは俺が黙りこくるせいで流愛が楽しくなさそうにしてたことは申し訳なかったけど…ごめんな、流愛。




流愛はそれからずっと静かだった。あんなに明るくてにこにこしてた流愛が。なにか考え事をしているようにも見えた。夕飯の時間は気まずくて仕方ない。流愛の料理は間違いなく美味いのだけど、会話がないせいで初日の夕飯に比べると全然美味しくない。やっぱり、ちゃんと口で謝るべきだろうか……。
数日後の夕飯で、久しぶりに流愛は口を開いた。久しぶりで嬉しがったが、なのに……俺はまたしても冷たい言葉をかけてしまった。一瞬流愛はびくうっっと震えたけど、またすぐに口を開いた。と思ったら発せられた言葉は予想していたものとは大きく違った。まさかの……俺に、自分のことが嫌いか、と聞いたのだ。やっぱり俺は焦り、すべて食い気味に受け答えしてしまった。俺が流愛のこと嫌いとか、ありえない。絶対流愛はわかってないんだろーけどな。それで全力で何回も弁解したらやっと信じてもらえて、流愛は久しぶりにほっとしたような顔をしていた。安心した見れてよかった。そう思い、俺が安心していると、流愛は不意打ちをしてきたんだ。「大好き」だと!?!?!?流愛は俺のこと、嫌いだと思ってたが……そうだったのか!?!?!てか、もしほんとだったら嬉しすぎるんだか!!!俺は今日死ぬ運命だったり!?!?!?まさかの発言に流愛自身もびっくりしたみたいで驚いた顔をしながら頬を赤色に染めた。
流愛が口が滑ったといえせっかく勇気出して言ってくれたんだから……俺も返事しなきゃ駄目か………と思い小さな声だけど、好きだと伝えた。もう一生分の勇気を使い果たした気分……。でも、言ってよかったよ。




これからもよろしくな、流愛。大好き、だ。








恥ず……。俺の柄に合ってねーな。
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