君と私の秘密
作業に取り掛かり2時間くらいした頃、突然咲恵に呼ばれた。

「みぃ〜!」

「なに?どうかした?」

「こっちの仕事片付いて手空いたから手伝いに来たよ!ふふ!」

「そうなの?ありがとう!」

終わるか少し不安だったからラッキー!

私は咲恵と2人で作業をやり始めた。

すると、突然咲恵が呟いた。

「ねぇ、最近ある噂が流れてるんだけど知ってる?」

「噂??なにそれ?知らない。」

噂…そんなのあるんだ。

そういうのには疎いからよく分からないんだよね。

「嘘!?知らないの!?」

「え…うん。」

咲恵は、はぁ…仕方ない。教えてあげよう。っと言い話し始めた。

「最近頻繁に吸血鬼が出るって噂があるの。」

「吸血鬼!?」

「そう!で、その吸血鬼の話なんだけど……」

吸血鬼は本来夜にしか行動しないらしが、最近は昼間に被害に遭う人が増えているというのだ。

被害に遭った人達が言うには、吸血された感覚は全くなかったらいし。

そのため、家に帰り家族や彼氏に言われて初めて気づくのだとか。

顔を見た者もいない。

そして、昼間の吸血は全て同じ吸血鬼がやってると言われてるらしい。

理由は、牙の痕が全て同じだからなんだとか。

吸血鬼はみんな同じ牙だと思っいたが一人一人違うらしい。

夜は昼間の吸血鬼も含め沢山の吸血鬼が血を欲して人間を襲っているらしい。

「てな、感じの噂!」

「へ、へぇー。なんか怖いね。」

「だよねー。でねでね、さらに怖いのがその吸血鬼は私たちの学校の生徒なんじゃないかって言われてるとこなの!」

「はい!?や、やめてよ!」

いやいや、冗談やめてよ。怖すぎるでしょ。

そもそも何故、私たちの学校の生徒だ!、なんて話になるのよ…。

「噂によると、昼間に襲われた子はみんな私たちの学校の生徒らしいよ!しかも、女子限定!」

タラしかなんかですか!?

もしや、女好き吸血鬼!?

信じらんない!

「あと、吸血鬼が吸血してるところは絶対みちゃいけないらしいよ!」

「え、なんで?見たらどうなるの?」

「血を全部抜き取られて殺されちゃうらしいよ…。」

ヒィ!?怖!?

「昼も夜も1人で出かける時は絶対気をつけなよ!」

「そもそも、吸血鬼なんていないって!」

そうだよ!いないよ!そんなのいない!

そもそも、人に気づかれないでどうやって吸血するのよ。

そんなの絶対無理だもん!

だから、吸血鬼がいるなんて嘘嘘!

「やっぱそうだよね!所詮噂だもんね!」

ははは!っと2人で笑っていた。

「あ、咲恵もう帰る時間!片付けよ!」

「わ!ほんとだ!」

私たちはバタバタと片付けをし会社を後にした。

「そういやみぃ、今日はコンビニ行くんだっけ?」

「そうそう!」

「じゃ、今日は会社前でバイバイだ!」

「「ばいばーい!」」

咲恵と会社前で別れ、私はコンビニを目指して歩き出した。

昨日通販で口紅を買ったからその振込に行かなくてはならないのだ。

ついでにアイス買ってこよ!

それはそうと、毎回思うけどなんでこのコンビニまでの道はこんなに暗いのよ!

コンビニまでの道は細い入り組んだ路地を通らなければならない。

ここ、街灯が3本くらいしかない。

そのため基本的には携帯のライトで照らしている。

バイト先ら少し行ったところの人気のない十字路を左に曲がれば近道となりすぐに着く。

真っ直ぐ行っても着くのだが、少し大回りになってしまうためいつも左に進んでいる。

曲がり角まで来るとなにやら人の気配がした。

一瞬、咲恵の話を思い出し足を止めた。

左の道からは何かを啜るような音が聞こえてくる。

「ちょ、ちょっと!なにするのよ!」

2人いるのか?そして、1人は女だろうか?

そっちの道通りたいんだけどなぁ。

どうしよう。

直進して遠回りするか、意を決して左に行くか。

やっぱりめんどくさいし左行こ!

きっと喧嘩でもしてどっちかが泣いているのだろう。

そして、啜る音は花を啜った音だろう。

そう思い勢いよく左に曲がった。

が、私はすぐに足を止めた。

目の前の光景に体が動かなくなってしまった。

携帯のライトが2人の男女を照らしていた。

女は人間だ。

けど、男は…何かが違う。

男は鋭い牙を出し、女の方に噛み付いていた。

そして、私のことをじっと見つめていた。

き、吸血鬼!?

で、でも本当にいるなんてことあるわけない。

もし、吸血鬼なら逃げなきゃ。

だが、逃げなきゃ!っと思うのが遅かった。

男はどんどんこちらに近づいてきた。

やばい!捕まる!

私は勢いよく遠回りの道の方へ走り出した。

「おい!待て!」

後ろから呼ぶ声がしたがそんなの構っていられない。

咲恵の話がほんとなら、捕まったら殺される!

そんなのやだ!死にたくないもん!

けど、なんだかさっきの人…零斗君に似ていたような…。

き、気のせいだよね!

そう思い私は、ただただ必死に走り続けた。

何分くらい走っだろうか。

ようやくコンビニが見えてきたのだ。

助かった!

安心し横断歩道を渡ろうとした次の瞬間…

「んん!?」

誰かに口を塞がれ暗い路地へと引っ張り戻されてしまった。

「しー!暴れんなよ。」

え…この声。

「零斗くん!?」

勢いよく振り返るとそこには息を切らし疲れきった零斗くんがいた。

「な、なんでいるの?」

「はぁ?なんでじゃねぇーよ。」

なんで怒るの!?

訳が分からず俯いてしまった。

………。

少しの沈黙の後、零斗君が口を開いた。

「お前…見たんだろ?」

見た?さっきのことだろうか。

「な、何も見てないよ。」

もし、さっきのが見間違えでなければ零斗君は吸血鬼だ。

だとすれば見たなんて言ったら殺される!

「おい。正直に言えよ。」

バレてる。 こわい。

もう、無理だ…。

「ごめん…なさい…見ました。」

あぁ、終わった。

「やっぱりな。はぁ…。

見られたからには仕方ねぇよな。」

「ま、まって!れ、零斗君は吸血鬼なの?」

「はぁ?お前見たんだから聞かなくても分かってんだろ。バカかっての。」

やっぱり本物の吸血鬼なんだ。

あぁ…私、今から死ぬんだ。

せっかく楽しい人生になってきたと思ったのになぁ。

中学卒業まで虐められて、

高校に入ってようやく楽しめそうって思ってた矢先にこれですか。

吸血鬼に殺されるなんて、ほんと笑える。

あーぁ、ほんとつまんない最悪な人生だったよ。

さよなら、皆。

私は意を決して目を閉じその時をまった。

-ポン-

頭に何かが触れた。

驚いて目を開けると零斗君の手が頭に乗っていた。

え?なに?

「お前これからは俺の餌な。1日1回血吸わせろ。あ、もしバラしたりしたら即殺すからな。」

餌…は!?

「え、なんで…?」

「あ?なに?嫌なの?嫌ならここで即殺す。」

ヒィ!それは嫌!

「え、餌になります!だから殺さないで!」

「ふ、ははは!おもしれぇ奴。」

零斗君は時間取らせて悪かった、また明日な。といい暗闇に姿を消した。

最悪だ…。

殺されずに済んだのは良かったけども!

餌ってなによ!餌って!

モヤモヤしながらも急いで用事を済ませ帰宅した。

明日から私の第2の人生が始まるのだ。

零斗君の餌として生きる人生が。

一体私はどうなってしまうのだろうか。
< 20 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop