君と私の秘密

魔界~零斗side~

夏休み上旬俺たちは夏の海へ旅行へ行った。

帰宅後、俺は疲れきってすぐに寝た。

柄にもなく俺は、楽しかった。なんて思ってしまった。

ま、俺は日に当たれば死ぬため日陰で見守ってただけだったけど。

でも、あいつと行った、みぃと行った屋台は楽しかった。

初めてのもんばっかりでワクワクした。

最初は行くつもりなんてなかった。

興味もないしな。

ただ、頬を真っ赤にしてみぃを見つめてる真樹を見て、こいつのことが好きなんだと察し、少し意地悪したくなったのだ。

だから、みぃを連れ出した。

本当はすぐに帰るつもりだった。

だけど、なんだか楽しくて居心地が良くて長居してしまった。

その結果、動けなくなって迷惑かけることになっちまった。

自業自得だよな。

また、罵られて暴力振るわれて放って行かれると思った。

だが、あいつは心配して色々としてくれた。

つい気が緩んだんだ。

それで、つい言っちまった。

日がダメだと。当たると死ぬと。

それを受け入れせっせと世話を焼くあいつはきっと良い奴なんだろうな。

そんなこんなでみんなの元へ帰ったら案の定、

咲恵怒られるし真樹には睨まれた。

夜は夜で、みぃの隣に座るなと真樹にブチ切れられた。

別にわざとではない。

ただ、落ち着きたかった。

初めてのことばかりで疲れきっていたため、少しでも体を落ち着けようと思ったのだ。

みぃの傍は落ち着くから何も考えずに隣に座った。

それがいけなかったらしい。

次の日はお土産を買いに行った。

お揃いといい5人で同じものを買った。

これもまたはじめてのことでなんだか嬉しかった。

最初は行きたくねぇ、くだらねぇって思ってたけど終わってしまうとなんだか寂しく思えた。

また、出かけれたらいいなぁ。

-チュンチュン-

んん…。

朝…か。

今何時だよ。

携帯には9時と表示されていた。

まだ9時かよ。

もう1回寝よ。

布団を被り直した時だった。

〜♪♪〜♪♪♪〜♪〜

携帯がなった。

うっせぇな。

誰だよこんな時間に。

「はい…もしもし…。」

俺は眠い目を擦り電話に出た。

「おはよう。316号くん…いや、零斗くん。」

俺は、ハッとした。

この声…そして、この呼び方は…

「おはようございます。魔王様。」

魔王様だ。一体なんのようだよ。

「どうだい、人間界は。元気に上手く生きているかね?」

「はい。ところで、要件はなんでしょうか?」

「あぁ、そうそう。至急大事な話がる。支度が終わり次第こちらに戻ってきてくれ。」

はぁ?

めんどくせぇ。

「電話ではいけないですか?」

「大事な話だ。直接話したい。それとも嫌だと言うのかね?」

ビクッ。

体が強ばるのがわかった。

「いえ、そんなことはありません。すぐ準備し戻ります。」

「待っておるよ。」

電話は切れた。

もう、魔王様の声は聞こえない。

なのに、まだ少し体が震えていた。

何も考えるな。

風呂でも入って一度落ち着こう。

俺はさっさと支度し家の近くの神社の裏へ向かった。

神社の裏は深い森になっている。

ここは、不気味だと誰も立ち入らない。

だから、魔界へ戻る時の迎えを待つには丁度いいのだ。

「316号だな。迎えに来た。さっさと乗れ。」

言われるがまま、俺は馬車に乗り込んだ。

なんでかは知んねぇけど、魔界に戻る際は、

必ず魔王様の使い魔が馬車でやってくる。

どっかの夢の国の話かっての。

10分くらいだろうか馬車に揺られていたが突然ガタガタっと止まった。

「着いたぞ。降りろ。」

相変わらずはえーな。

「失礼致します!」

使い魔達が大きな扉を開けた。

そこには全吸血鬼が集合していた。

俺の家族もいた。

「おぉ。やっと来たか。これで全員だな。」

一体なんなんだ?

全員集められることなんて滅多にないが。

「では、話を始める。実は…。」

魔王様は淡々と話し始めた。

どうやら俺たち吸血鬼の噂が広がっているらしい。

人間を取っかえ引っ変えして襲っていると。

そして、それを見たら血を全て抜かれ死ぬとか。

なんつー話だよ。

取っかえ引っ変えしてんのら事実だしなんも言えねぇーけどよ、殺しはしねぇーよ。

見つかったら俺たちが罰を受ける羽目になるだけで、人間を殺したことは1度もない。

「と、まぁこんな感じの噂がある。これ以上噂が広がり目立ってしまうと魔界全体に迷惑になる。」

確かにやべぇよな。

「では、魔王様!一体どうすればよろしいのでしょうか?」

何処かで1人男が言った。

魔王様はニッコリと微笑み、

「そう、そこでルール変更をしたいのだ。」

え?、うそだろ?っとみんながざわつき始めた。

「うるさいぞお前たち!静かにしろ!」

使い魔が喝を入れると辺りはシーンと静まり返った。

「もともと、同じ女の血もしくは男の血を吸ってはいけないというルールだったが、同じ人間の血を吸っても良いことにする。」

なるほど。

「人間界にて、1匹だけ上手く手懐けて自分の餌にすること。よいな?」

「はい!」

全員が了承したためルール変更が決まった。

餌、ねぇ…。

どうすっかなぁ。

「話は終わりと言いたいところだが、もう1つ言いたいことがある。」

はぁ?まだあんのかよ。

今日はやけに長ぇな。

「316号、お前のことだ。1番前へ来い。」

え、なんで俺。

「はい。」

「お前、昼間に血を吸っているな?」

「はい。」

「お前が昼間に吸血をしているせいでさらに噂が広まっているのだ。吸うなとは言わないがもっと上手くやれ。下手くそにしか出来ないのならするんじゃない。よいな?」

「はい、すみませんでした。」

また、体震えた。

先程の声とは違い低く怒った声だった。

どうしよ。拷問という名の暴力が始まるのか?

俺の後ろでは皆がヒソヒソと話していた。

"あの子って昔っから厄介な子よね"

"家族は可哀想だな"

など口々に言っているのが聞こえてきた。

怖い。

今すぐ逃げ出したかった。

その時、俺の背中に手が添えられた。

「申し訳ございません、魔王様。よく言って聞かせますのでどうか今回はお許しください。」

母さん。

母さんが隣に来てくれたのが少し嬉しかった。

「構わん。母親に免じて今回は許してやる。次もし、何かやらかしてみろ、分かっているな?」

「は、はい。」

「では、解散だ。」

その言葉を合図にゾロゾロと帰って行った。

「おい、門前で待っているから準備が終わり次第来い。」

「はい。」

そういうと使い魔はさっさと行ってしまった。

さ、俺も家族に挨拶だけして帰るか。

後ろを振り返ると母さんがこちらへ向かってきた。

「母さん!さっきはありが……」

-パシン!-

えっ…。

ありがとう。そう言おうとした時、思いっきり頬を叩かれたのだ。

「母さん?」

「あなたはどうしていつもいつも、私たち家族に恥をかかせるの!これ以上恥をかかせないでちょうだい!」

「ごめん。」

怒った顔をしてた。

「迷惑なのよ!どうして貴方みたいなのが私たちの家族だったのよ!」

もうやめてくれ。

「そうだぞ!この恥さらしめ!」

「お前なんかが兄貴なんて俺、恥ずかしいよ!」

やめろ。

もう、聞きたくない。

少し期待した俺が馬鹿だった。

庇ったくれた、助けてくれたから…。

心の底では愛してくれてるんじゃないかって期待した。

はっ、笑えるな。

昔も今も変わられねえ。

俺は家族に必要とされてない。

愛されてない。

庇ってくれたからって期待して、調子に乗って挨拶して帰ろうなんて思っちまってさ。

本当…馬鹿だよな。

あぁ…なんか、泣きそう。

ダッせぇな俺。

ぐっと唇を噛み締め泣くのを我慢した。

さっさと人間界へ戻ろう。

「悪かった。もう、戻るよ。」

俺は使い魔のいる門へ向かった。

その際も後ろからは両親と弟の罵声が聞こえた。

関わらなければ良かった。

「はぁ…。」

深いため息を1つつき馬車に乗り込んだ。
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