君と私の秘密

変わった日常

「みぃーー!おはよう!」

「おはよう…。」

何故か知らないが朝からハイテンションな咲恵。

そして、信じられないぐらいにテンション下がりまくりな私。

まぁ、テンションが上がらないのは皆様お察しの通り零斗くんのせいなわけですよ。

はぁぁぁ。

結局、餌になれと言われた次の日からきっちりと毎日吸血された。

とはいえ、思ったよりは吸われていないのだが。

吸血鬼といえば沢山血を吸うイメージだったけど、そんなことも無いみたいだ。

どうせ、今日も吸われる運命なのだ。

参ったよ。

「みぃ、元気ないじゃん!もっと元気出してこ!」

「あ、うん!」

いやいや、無理ですよ。

「お前らー!おはよう!」

後ろから元気に走ってくる3人組が見えた。

ここにもいたよ。元気な人達が。

「おはよう、咲恵ちゃん!今日は迎えに行けなくてごめんね?」

「おはよう、秋羅!いいよいいよ!気にしないで!」

ん?迎えに?

なになに、いつの間にそんなに中深めたのよ。

「おはよ、みぃ。」

「げっ、お、おはよう。零斗君。」

零斗くんいたのね…。

さすがにこんなとこで吸血はしないよね。

バレたくないみたいだしね。

「どうしたの?みぃ。」

「へ!?な、なんでもないよ!ほら行こ!」

まずい、違和感ありすぎたかな。

バレるバレる。

私は咲恵の腕をグイグイと引っ張り歩いた。

すると、咲恵が、

「ねぇねぇ、今日から二学期だね!またよろしくね!」

といい、4人とも笑顔で頷いた。

宜しくしたくない人もいるけれどもね!

まぁ、それは置いといて、実は今日からは二学期が始まる。

二学期には大きな行事が2つある。

文化祭、体育祭だ。

この2つ楽しみなんだよねー。

そして、今からは私の大嫌いな二学期の始業式が始まろうとしていた。

「えー、学生の皆様おはようございます。今日から…」

うぬんかぬんと校長の話が始まった。

話はいつも同じだ。

校則を守りましょとか、健康に気をつけましょうとか、校長の夏休みの話とか…。

とにかく長い。

その後、表彰があったり校歌を歌ったり淡々と式は進んで行った。

「えーでは、他に話がある先生は前へお願いします。」

すると、1人の先生が前へ向かった。

えー。まだ話すの。

終わろうよ。

眠い目をこすりチラッと咲恵の方を見ると、

完全に寝落ちしていた。

「私からはひとつだけです。手短に話しますね。皆さんはもう、知っていると思いますが、吸血が出るという話です。」

私はドキッとした。

「最近被害が増えていますので、皆さん十分に気をつけて生活してください。そして、我が校にもいるかもしれないとのことですのでそこも気をつけてくださいね。以上です。」

零斗くんのこと…だよね。

チラッと零斗くんを見ると、爆睡していた。

言われてる当の本人は呑気ですね!

もうちょい危機感持ちなよ…。

でも、もし、零斗くんが吸血鬼だとバレてしまったらどうなるのだろうか?

「では、始業式を終わります。」

そんなことを考えているうちに式は終わった。

「お疲れ様!明日からは本格的に、授業だね…。あーやだわ。」

咲恵はだるそうに伸びをしていた。

「そうだね。」

たわいもない会話をしていると後ろから声がした。

「みぃ。」

ビクッ!

振り返るとそこにはやっぱり零斗くんがいた。

「な、なんでしょうか?」

「なんでそんな怯えんだよ。教えて欲しいことあっから資料室行こ。」

「はい。ごめんね、咲恵!ちょっと資料室よってから帰るね!」

「了解!じゃ、また明日ねばいばーい!」

そういい咲恵は秋羅の元へ走っていった。

はぁ…あの二人は楽しそうだな。

私は重い足を引きずり零斗くんの後ろを歩いた。

-バン-

資料室に着くなり勢いよく扉を閉め、私を壁に押し付けた。

「さて、今日の餌の時間だ。」

そういい、私の肩にカプっと吸い付いた。

「うっ…。」

やっぱり吸血されるのは少し痛い。

「やっぱお前の血はうめぇな。最高。」

嬉しそうに零斗くんは笑った。

-キュン-

あ、嬉しそう。可愛い。

ぬぁーーー!違う違う!

可愛いって何よ!可愛いって!

何考えてんだ私!しっかりして!

「ご馳走様。ありがとな。もういい。」

「え、もういいの?」

「は?なに、まだ吸って欲しいの?」

「ち、違う違う!そうじゃなくて、私の中の吸血はいっぱい吸うってイメージがあるから少しでいいのかなぁーって思っただけ。」

そう、そうだよ。そう思っただけ。

もういいの?なんて何言ってんの私。

なんだか時々変だよ、私。

「あっそ。吸う量なんて吸血鬼によって違うもんなんだよ。」

「そ、そうなんだ!」

ふーん。そうなんだ。

じゃぁ零斗くんはあまり吸わないタイプの吸血なのか。

「おい。帰んぞ。家まで送る。」

「あ、うん。って、え!?」

家!?なぜ!?

「なんだよ?嫌なのかよ。」

「嫌じゃないです!」

嫌ではないのだ。

たが、送ってもらうと零斗くんの帰りが遅くなっしまうのではないかと思ったのだ。

「じゃー行こうぜ。」

「あ、ちょっと待って!」

私は急いで追いかけた。

今日の零斗くんは宣言通り、門を出て左へ。

私の家の方へ向かった。

「ね、ねぇ!本当に送ってくれるの?」

「あ?そうだって言ってんだろうが。」

「お家遠くなるんじゃないの?大丈夫?」

零斗くんはいつも門を出て右へ帰って行くのだ。

だから、左に来てしまうと遠くなってしまう。

先程も言ったが帰りが私のせいで遅くなってしまうのが申し訳ない。

「なんで遠くなんの?」

何その質問は。

あなたの家が反対方向だからでしょうが!

もう、なんなのよ。

「え、だって零斗くんのお家反対方向でしょ?だから遠くなるじゃ…。」

「は?俺ん家、お前の家の隣のマンションだけど?」

あー私の家の隣か!

じゃー大丈夫じゃ……

「えーーーー!!」

「んだよ!うっせぇな。」

「ご、ごめん!」

は、初耳なんですげと!?

隣!?

行きしな会わないし、いつも反対方向に帰ってるじゃんか!

「え、じゃぁなんでいつも反対方向に行ってるの?」

「あーバイトな。バイト先が向こうなんだよ。」

「そうだったんだ。てっきりそっちに住んでるのかと。」

「ずっとお前ん家の隣だよ。」

「じゃぁなんで朝いつも会わないんだろう?」

ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

「たぶん、真樹の家行くのに裏道通ってるからだろ。」

あーなるほどね。

そりゃ会わないわけだ。

その後も色々零斗くんとお喋りをした。

お喋りをしていたせいかいつもより早く着いたように思えた。

「じゃ、家ここだから!ありがとう、零斗くん!」

「おう、また明日な!明日は昼休憩の時飯食ったら資料室な。じゃ。」

「わかった!またね!バイバーイ!」

帰り道に零斗くんと話しててなんとなくだけど感じたんだよね。

零斗くんは悪い吸血鬼じゃないって。

それに、なんだか居心地がいいと思った。

餌になってまだ2週間とちょっとだけど、もう全く怖くない。

そりゃ、最初は怖かった。

でもなんだろ?3日目には恐怖はなかった。

ただ、貧血とかになるのが嫌で憂鬱な気持ちではあった。

なのに、なぜだろうか。

今日の朝まであんなに貧血とかになるのが嫌で憂鬱だったのに、今は明日が楽しみだと思ってしまう。

私、やっぱり変だ。

これじゃまるで零斗くんに吸血してもらいたいみたいじゃんか。

どうしたんだろ私。
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