君と私の秘密
-♪~♪~♪♪~

「ん〜うるさい。」

私は腕を伸ばし携帯のアラームを止めた。

と、そこで違和感に気づいた。

ん?私…なんか抱いて寝たっけ?

自分の隣がふっくらしていることに気づいたのだ。

え?

恐る恐るめくるとそこには零斗くんが寝ていた。しかも、気持ちよさそうに。

「ぎゃーーーー!!」

え?え?なんで?え?

もう、私の脳内は大パニック。

パニックを起こし突っ立っていると零斗くんがもぞもぞと起きてきた。

「おはよう…お前朝からうるさすぎ。」

「ごめん…じゃなくて!なんでいるの!?」

すると不思議そうにえ?っと言われた。

「え?じゃなくて!」

「覚えてねぇの?俺が入ってきたらお前がおいでって腕広げてくれたんじゃん。」

腕を広げて…えーーー!?

アレ夢じゃなかったの!?

「ゆ、夢かと思ってた…。て、てかどうやって入ったのよ!」

「そこの窓。」

窓!?

はっ!昨日開けたまま寝ちゃったんだ!

いや、待って。ここ2階だよね?

いつも零斗くんはちゃんと玄関からくる。

だから、最初はママに彼氏?なんて聞かれたもん。

でも、今日は二階の窓。

「ど、どうやって登ったの!?」

「お前の部屋の前に立ってる木登ってきた。」

は!?猿かあんたは!

「吸血鬼だから登んのは得意。」

「吸血鬼ってそういうもんなの?」

「そうそう。てか、さっさと用意して行こうぜ。遅刻する。」

あ!そうだった準備しなきゃ!

「零斗くん!リビングで待ってて!」

え…と困惑気味の零斗くんを部屋の外へ追い出しさっさと支度を始めた。

急いで下に降りると落ち着かないのかキョロキョロする零斗くんの姿があった。

「零斗くん、パン食べる?」

「いらねぇ。」

「了解!」

私は手早く自分の分のパンを用意し食べた。

鍵は閉めたし、忘れ物なし!よし!

「行こ!」

「おう。なぁ、お前親は?いつも居んのに今日は居ねぇじゃん。」

「出張中だよ。明後日の朝に帰ってくるんだってさ。」

「しゅっちょうってなに?」

「あ、えっと仕事でここじゃない遠い所へ行ってるの。」

「へー。」

私の両親は昨日の朝から出張へ行った。

どこって言ってたかは覚えてないんだけどね。

仕事が早く片付けば明後日の朝、長引けば明明後日なんだとか。

はぁ…早く帰ったきてほしいな。

わーわーとそんなことを話しているとあっという間に学校に着いた。

わぁ…門すっごい飾られてるなぁ。

廊下も各教室もしっかりと飾られていた。

「おっはよー!2人とも早く準備しちゃって!」

「おはよう、咲恵。はーい。」

教室に着くなり咲恵が元気に出迎えてくれた。

「なぁ、これどうやって付けんの?全然付かねぇんだけど。」

零斗くんはエプロンの紐をブンブン振り回していた。


「付けてあげるから、紐振り回さないで。はい、後ろ向いて。」

そういうと大人しく後ろを向いた。

「これなんのために付けんの?超邪魔じゃね?」

「文句言わないの。服を汚さないために付けるんだから。」

ふーんっとなんだか納得がいかないような返事をした。

「よしOK!」

「さんきゅー」

それから私たちはそれぞれの持ち場に着いた。

私は咲恵と一緒にジュースを作る係。

「思ってた以上に売れるね。」

「そ、そうだね。」

暑いからだろうか、ミックスジュースは飛ぶように売れた。

「ねぇねぇ、みいは昼からどうすんの?やっぱり零斗くんと回るの?」

「いや、何も決めてない。咲恵は秋羅?」

「うん!もちろん!決まってないらさ、零斗くん誘って回っておいでよ。」

「うん!誘ってみる!」

私達は午前までで、お昼からは午後の担当の人と交代なのだ。

だから、お昼からは自由に出し物を見回ることが出来る。

私は午後からのことは全く何も考えたいなかったのだ。

零斗くん一緒に回ってくれるかな?

チラっと呼び込みをしている零斗くんを見た。

零斗くんは女の子達に囲まれていた。

だが、いつも通り面倒くさそうにあしらっていた。

面倒くさそうにあしらいながらもちゃんと呼び込みをしてくれいたおかげか午前は大盛況で終わった。

「みぃ、おつー!ちゃんと零斗くん誘って回るんだよ!じゃーね!」

「うん!バイバイ咲恵!」

咲恵は秋羅の元へ走っていった。

零斗くんどこだろ?

キョロキョロとしていると後ろからこつかれた。

「いた!?って零斗くん!」

「なにしてんだよ。てか、この後一緒に回ろうぜ。」

「うん!いいよ!準備してくるから待ってて!」

「おう。」

私は急いで準備を始めた。

ゴソゴソと準備をしていると、ガラガラっと教室の扉が開いた。

「みぃ!」

呼ばれほうに顔を向けるとそこには真樹がいた。

「真樹!どうしたの?」

「この後なんかある?なかったら一緒に回りたいなと思って。」

「あ、ごめんね!約束してる人いるんだ。」

「そっか、じゃ、仕方ねぇーな!」

一瞬悲しそうな顔をしたが直ぐに笑顔になった真樹。

「本当ごめんね!じゃ!」

私はもう一度謝り教室を後にした。

走って下駄箱へ行くと零斗くんがこちらへ近づいてきた。

「ごめん!おまたせ!」

「おー。」

「行こっか!」

さて、どこの出し物から回ろうか。

進もうとすると、グイッと腕を引っ張られた。

「キャ!え!?なに!?」

「今日、まだ吸ってねぇから先にそれしてから。」

あ、忘れてた。

私は、ハイハイと零斗くんの方を向いた。

痛…くない…?

あれ、今日はいつもよりかなり弱々しいな。

そして、少しだけ牙が震えている気がした。

もしかして、昨日の熱下がってない?

治ってなかったのかな?

「零斗くん、今日は吸うの優しいんだね。もしかして、調子悪い?」

零斗くんはスズっと血を吸い上げ顔を上げた。

「あん?別に。超元気。熱もねぇしな。」

「そう?まぁでも無理はしないでね。」

「おう。じゃ、回りますか。」

そして、外でやっている出し物を見に行った。

「なぁ、あれ食いてぇ。」

どれ?と指さす方を見ると別のクラスがやっていたクレープだった。

「いいよ。買いに行こ。」

私は苺が入ったクレープ、零斗くんはバナナクレープを買った。

「うま。」

「美味しいね。」

その後も色々と買っては食べを繰り返していた。

どれくらい出し物をみて回っただろうか。

不意に零斗くんに服を引っ張られた。

「ん?どうしたの?」

「ごめん、休憩したい。」

「了解!体調悪くなっちった?」

そう聞くと零斗くんは俯き小さな声でうんと呟いた。

「じゃ、保健室で休もっか!」

なるべく体調を悪化させないようにとゆっくり向かった。

保健室に着くとどうやら先生は不在のようだった。

「…ベッド…」

「寝る?どうぞ。先生来たら私伝えるからゆっくり休んでていいよ。」

零斗くんはベッドに倒れ込んだ。

倒れ込んだ途端荒い息が吐き出される。

熱出てきちゃったのかな?

おでこに手をやると少し熱かった。

体温計と氷借りとってこよっと。

そう思い立ち上がると零斗くんに手を捕まれた。

だが、その手はとても弱々しかった。

力がほんとんど入っていない。

零斗くんはうるうるとした目でじっとこちらを見ていた。

「どうしたの?」

「…行か…ないで…はぁ…はぁ…おね…はぁ…がい…はぁはぁ…。」

んー仕方ないか。

零斗くんが寝てから取りに行くことにした。

しばらく手を握り頭を撫ぜているとスースーと吐息が聞こえてきた。

よし、今のうちに。

私は起こさないようにそっとそばを離れた。

ゴソゴソといるものを集めていると、先生が戻ってきた。

「あれ、葵葉さんどうしたの?体調悪い?」

「あ、先生!私じゃなくて零斗くんが体調悪いんです。すみません、勝手にお借りして。」

「塩野くんが?そうだったのか。構わないよ。好きに使ってくれ。」

「ありがとうございます!」

先生に一礼し零斗くんの元へ戻った。

零斗くんはぐっすり眠っていた。

体温計を挟んでも起きる気配はなかった。

熱は…36.3度。

ないね。

この様子だとしばらく起きないだろうと思い私も少し寝ることにした。

「…ぃ…みぃ…みぃ!」

は!めちゃくちゃ爆睡してた!

「おはよ。悪かったな迷惑かけて。」

「全然大丈夫だよ!それより体調大丈夫?」

「あぁ、元気になった。」

良かったとにっこり微笑むと零斗くんは申し訳なさそうに、

「みぃ、時間。」

と一言。

へ?と思い時計を見ると16時55分。

「やば!?学校閉まっちゃう!い、急げる?」

「お、おう。」

急いで保健室を出ると先生と鉢合わせした。

「あ、起きたんだね。いやー2人とも気持ちよさそうに寝てたから起こすに起こさなかったんだよね。」

ははと先生は笑った。

いや、起こしてよ!学校閉まったらどうするのよ!

そう思いながらも零斗くんと2人で苦笑い。

「ま、ともあれ、2人とも気をつけて帰るんだよ。さようなら。」

「はい、さよなら。」

「おう。」

先生と挨拶を交わしいそいで学校を出た。

「今日、マジでごめん。迷惑かけた。」

「ん?あーいいよいいよ!気にしてないから。」

零斗くんはありがとうと微笑んだ。

「なぁ、お願い聞いてくんね?」

「ん?なに?」

次の一言に私は目を見開いた。

「今日さ、お前ん家泊めてくんね?」

「え!?」

「親、居ねぇんだろ?な、お願い!変なことは絶てぇしねーから。」

いや、さすがに男子を泊めるのはどうなのだ?

そうは思ったがまだ、零斗くんと一緒に居たいという気持ちもあった。

「じ、じゃ用心棒ってことなら。」

「マジ?サンキュー!」

用心棒という、条件で泊まりを許可した。

零斗くんは自分の服を取ってくるといい1度自分の家へ帰った。

その間にお風呂を沸かし夕飯の準備をした。

とは言っても零斗くんはトマトジュースしか飲まないので、私の分だけだ。

「おじゃましまーす。」

「どうぞ。お風呂湧いてるから先入っちゃっていいよ!荷物は適当にその辺置いといて。」

「お、おう。じゃ、遠慮なく風呂借りるわ。」

「はーい!」

さて、零斗くんが入っている間に、ご飯食べて片付けしちゃおっと!

私はササッとご飯を食べ片付けをした。

ちょうど片付け終わったタイミングで零斗くんがお風呂から出てきた。

「さっぱりした。ありがとう。」

「それは良かった!はい、トマトジュース。」

「サンキュー。」

「私の部屋行ってベッド使っていいよ。私は来客用の布団で寝るから。」

「え、俺、布団でいいよ。」

零斗くんはびっくりしていたが、体調を崩している人を床で寝させる訳にはいかないと思い、

ベッドで寝るよう言い聞かせた。

「わかったよ。」

そういい部屋へ向かった。

私はお風呂へ入り綺麗にした後、来客用の布団を取りに来客部屋へ向かった。

うぉ!?

案外重いなぁ。

私はフラフラとしながら自分の部屋へ向かった。

コンコン

「ごめん!零斗くん開けて…。」

ドタドタと開けに来てくれた。

よいしょ!

あー重たかった。

「本当にいいのか?」

「いいの!気にしないで!」

布団の準備を終え、零斗くんの方を見ると青白い顔をしていた。

「零斗くん…顔色めちゃくちゃ悪いけど大丈夫?」

「う…ん。」

嘘付いてる。絶対。

じっと零斗くんの目を見つめていると、

零斗くんはポツリポツリと呟いた。

「ちょっと気持ち悪いのと体がだるいだけ。ごめん。」

「そっか。もう寝よっか。先寝てて!私することあるから。お休み!」

「お休み」

それから、私は1階へ行き袋をつけた洗面器、体温計、薬などを準備した。

なにかあった時のために。

それを持ちそーっと部屋へ戻り、電気を消し私も眠りについた。

あれから何時間くらい寝たのだろうか。

隣のベッドから声が聞こえる気がする。

んんー。

今何時…?

携帯には夜中3時と表示されていた。

3時か…。

というか、零斗くん…なんか喋ってる?

私は体を起こしベッドを覗いた。

そこには、泣きながらひたすらに謝る零斗くんの姿があった。

「…ごめん…なさい…ごめんなさい…ごめ…んなさい…うぅ…やだ…ごめんなさい…ひくぅ…。」

私はベッドに腰掛け、リズム良くトントンと叩いた。

すると、次第に泣きやみうっすらと目を開いた。

「あ、起こしちゃった?ごめんね。」

「…」

零斗くんは黙ったままゆっくりと起き上がった。

「大丈夫?」

やはり反応はない。

もう一度呼びかけようとしたとき、

零斗くんが勢いよく口を抑えた。

そして、背中をぶるっと震わせ、うっと口から発せられた。

もしや、吐く!?

そう思い私は持ってきていた袋付きの洗面器を持たせた。

そして、そっと背中をさすると我慢していたものはいとも簡単に決壊した。

「うっ…おぇ…ごほごほ…おぇ…はぁはぁ。」

「よしよし。」

15分ほど、吐き続けようやく落ち着いたらしい。

「これ、捨ててくるから寝ててね。」

「……。」

そう言い部屋を出た。

先程から一切口を開かない零斗くん。

そんなにしんどいのだろうか。

心配になりながらも片付けをし部屋へ戻った。

部屋へ戻ると零斗くんは膝を抱えてブルブルと震えていた。

ん?もしかして寒い?

「零斗くん、寒い?」

そう言い肩に手を置くと大袈裟なほど零斗くんは飛び上がった。

「ごめん、びっくりさせて。とりあえず、1回熱…。」

そこまで言いかけて様子がおかしいことに気がついた。

「零斗くん?」

「うっ、ひくぅ…ごめんなさい…ごめんなさい…吐いて…体調崩して…ごめんなさい…許してください…ごめんなさい…うっ…あぁ…ひくぅ…。」

布団を頭から被りうわ言のようにひたすら呟いていた。

私はそっとベッドに乗り布団を剥いだ。

「零斗くん、大丈夫だよ?怒ってないよ?」

「…ひぃ…うぅ…ご、ごめんなさい…あぁ…ひくぅ…母さん…怒らないで…。」

お母さん…?

「零斗くん、私、お母さんじゃないよ?未来だよ。」

そっと零斗くんの手を握った。

すると、視点の定まらなかった目はようやく私を捉えてくれた。

「……うっ…みぃ…。」

「うん、そう。私、怒ってないよ?」

「…みぃ…みぃ…」

名前を呼びながら私に抱きついてきた。

「なに?大丈夫だよ?よしよし。」

しばらく続けていると次第に零斗くんは落ち着いていった。

「寝よっか!」

ニッコリと微笑みベッドから降りようとすると

零斗くんに腕を引っ張られた。

「行かないで…頼むから…。」

「え…。」

「…ごめん…だせぇこと言ってんのも分かってる。けど、怖ぇんだ。頼む。そばにいてくれ。」

今にも泣き出しそうな目だった。

「しょーがないな!じゃ、隣で寝てあげる!」

ふふと笑い零斗くんの隣に横になった。

「ありがとう…。」

そういい零斗くんは私を抱きしめ眠ってしまった。

零斗くんの腕の中は心地よくて気づいたら私も寝ていた。

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