君と私の秘密
朝。

ドタバタドタバタ。

「零斗くん準備できた?行くよー!」

「おう!あ、財布。」

「ちょ、早く!ほんとに遅刻ちゃうよ!」

私たちは今、急いでいる。

昨日夜中に起きていたせいもあった寝坊した。

起きたら家を出る時間の10分前だった。

「悪ぃ!行こうぜ!」

ふふ。

「なんで楽しそうなんだよ。」

「別に。いこ!」

なんだか同棲中のカップルみたいでいいなと思った。

私たちは急いで学校へ向かった。

走って向かったためチャイムが鳴る1分前に教室へ着いた。

「はぁはぁ…セーフ!」

「つ、疲れた…。」

そんな様子を見ていた咲惠はケラケラと笑ってた。

ムウーっと頬を膨らませていると先生がやってきた。

「皆さん、おはようございます。今日は文化祭最後の日です。楽しんで終わりましょう。」

そして、ここからは自由行動だ。

「みぃ、今日も一緒に回るだろ?」

「うん!」

「お、あんたらは今日も一緒に回んのね。仲良いね〜!」

楽しそうに咲惠は笑った。

ガラガラ。

秋羅達がやってきた。

「あ、咲惠〜!迎えにきたよ!今日も楽しもうね!」

ははっと秋羅は笑った。

隣にいた真樹はチラッと私の方を見た。

「なぁ、みぃ。今日は一緒に…」

「ダメだ。」

真樹が何かを言い切る前に零斗くんが遮った。

「はぁ?お前には話しかけてねぇよ。俺はみぃに聞こうとしてんの!」

「知らねぇ。無理なもんは無理だ。こいつは俺と回んの。」

チッと真樹は激しく舌打ちをした。

「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて。零斗くん3人で回る…」

「無理。却下。」

まだ言い終わってないし!

そして、即答なのね!

「だそうです。真樹ごめんね。」

「いいよ。お前が悪いわけじゃねぇし。」

そういいにっこりと笑ってくれた。

「んじゃ、真樹はうちらと回るか!」

「しゃーなしな。」

「おい!」

ふふ。

咲惠と真樹のやり取りはいつ見ても面白い。

「ちょ、何笑ってんのよ、みぃ!」

「ごめんごめん。」

「もう!じゃ、私たちは行くね!バイバイ!」

「うん!バイバイ!」

3人は騒ぎながら行ってしまった。

「零斗くん、私達も行こっか。」

「そうだな。」

私達も出し物のお店へ向かった。

2日目の今日も零斗くんは、

あれが気になる!これが気になる!

とはしゃぎまくり。

今日気になったのは、たこ焼き、焼き鳥、ポップコーンらしい。

ある程度食べ歩きをしたころ零斗くんが、

2階の2年生の教室の出し物へ行きたいと言い出した。

私は何があるのか知らなかったため

いいよ!と笑顔で答えた。

だか、この後しっかりと後悔することになった。

「ここ!これ入りてぇの!俺ずっと気になってたんだよな!ってみぃ?」

「……え…これ、入るの?」

「おう!」

零斗くんが入りたかったと指さしたのは、

お化け屋敷だった。

高校の文化祭でするものだからそこまで怖くはないと思う。

ないとは思うけれども!

やだ!入りたくないんだけど!

「……私も入らなきゃだめ?」

「当たり前だろ!入らなくていいなら初めから1人で来てるっつーの!」

そりゃそうか…。

「なに、怖いの?」

「べ、別にそういう訳じゃ…。」

「ははは!強がんなって!ほら、手繋いどいてやっから。行くぞ。」

そういって零斗くんは私と手を繋いでくれた。

うぅ…暗すぎない?

いや、お化け屋敷だから当たり前か。

ペチャ。

「ギャーーーー!」

「ん?これ、こんにゃくだな。行くぞ。」

こんにゃく!?

そんなもん垂らしてんじゃないわよ!

キィー。

「ギャーーーー!!」

「ほー。扉開けたら人体模型が顔を出すって仕組みらしいな。すげぇな。」

ちょっと、なんで冷静なのよ!

高校のお化け屋敷だよね!?

怖すぎるって!

結局私は最後の最後まで悲鳴を上げていた。

「お、終わった。」

「楽しかったぜ!結構しっかりと作られてたしお前の反応も面白くて最高だったわ。」

「お、面白くないもん!」

ははと零斗くんは笑った。

「さて、もう12時だしお食事タイムといきますか。」

零斗くんは私の手を握ったまま歩き出した。

もうそんな時間か。

私はいつも通り資料室にて吸血された。

今日はいつもにも増して痛かった。

「私、御手洗行ってくるから玄関前で待ってて。」

「了解。」

私はトイレをし、手洗い場の鏡で方を確認した。

はぁ。

今日は強めだったから少し痣になったなぁ。

どうしちゃったんだろ?

そんなことを考えながら私は玄関へ向かった。

玄関へ着くと零斗くんの姿はなかった。

あれ?

どこ行ったんだろ?

トイレかな?

キョロキョロとしていると後ろから誰かに肩を掴まれた。

「キャ!」

「あ、悪ぃ悪ぃ!お前一人?零斗は?」

そこに居たのは真樹だった。

「びっくりした…。それがどっかいっちゃったみたいでさ。」

「へー。そうなんだ。じゃさ、俺と回ろうぜ!」

うーん。どうしよう。

回るのはいいんだけど、勝手に行って零斗くん困らないかな。

それだけが心配で返事に困っていると真樹の後ろの方から零斗くんが走ってくるのが見えた。

あ、零斗くん!

呼ぼうとしたが…私は辞めた。

だって、様子が変だったから。

そして、私に気づく様子もなく通り過ぎていってしまった。

泣いてた?

追いかけなきゃ。

「真樹ごめん!」

そういい、私は零斗くんの後を追った。

「そんなに零斗がいいのかよ…。」

そう呟いた真樹の声は焦っていた私には届いていなかった。

零斗くん、足はや!?

何処行ったんだろ…。

なんだかずっと胸騒ぎがしていた。

早く見つけなきゃ。

人混みを掻き分け必死に探した。

人気の無いところ…きっとそこにいるはず!

あっちこっち回ったが見当たらなかった。

資料室にもいなかった。

となると、外の人気のないところ?

中庭はさっき探したし…。

うーんと考え1つ行っていないところを思い出した。

体育館裏…。

行ってみよう!

急いで向かった。

すると、膝を抱え込み小さく蹲っている人がいた。

あの髪型は…。

「零斗くん!」

呼んでも反応はなかった。

隣にしゃがみ名前を呼びながら肩を揺らした。

「…ヒュッ!? ハッ…うっ…ヒュ…ご…ヒッ…なさ…うぅ…ヒュ…い。」

過呼吸を起こし泣いていたらしい零斗くんは意識を失い倒れ込ん出しまった。

「零斗くん!?」

どうしよ…。

私じゃ運べない。

だ、誰か大人の男の人。

急いで来た道を引き返そうとしたその時。

「あの…大丈夫ですか?焦ってるような声が聞こえたので心配で見に来てしまいました。すいません、立ち入り禁止って書いてるのに。」

ありがたい!

ナイスタイミングで来てくれた!

「すいません!お願いがあるんです!この人を保健室まで運んで貰えませんか!過呼吸起こして倒れたんです!」

「え!?それは大変だ!すぐ連れて行きましょう!」

男性は軽々と零斗くんを持ち上げ保健室まで運んでくれた。

「ありがとうございました!」

「いえいえ。もし、体調が優れいないようなら病院へ行くことをおすすめするよ。」

そういってにっこりと笑い立ち去った。

ほんと、助かった…。

一安心し、そっと保健室の扉を開けると、

微かに鳴き声が聞こえた。

零斗くんまた泣いてる?

急いで零斗くんの元へ駆け寄ると寝ながら泣いていた。

怖い夢でも見ているのだろうか?

「…ヒクッうぅ…」

大丈夫。怖くないよ。

そんな思いを込めてそっと頭を撫でた。

すると、少しずつ落ち着いていった。

そっと手を離そうとすると零斗くんに掴まれた。

「え。」

起きた?っと思ったが寝ているようで、また少し泣き出してしまった。

「…行かないで…うぅ…やだよ…怖いよ…うぅ…。」

一体どんな夢を見ているのだろうか?

大丈夫大丈夫。そばに居るよ。怖くないよ。

と、今度は手を握り傍にあった椅子に座った。

そうしてる間にまた、いつの間にか寝てしまった。

んん…。

あれ?私寝ちゃってた。

今何時?

携帯で確認すると16時と表示されていた。

やば!終わりのHRサボっちゃっよ。

そう思っていると静かにカーテンが開かれた。

「あ、起きたんだね。担任の先生にはちゃんと僕から伝えてあるから心配しなくていいからね。」

「すみません!ありがとうございます!」

先生ナイスだよ!

感謝します!

「彼、結構顔色悪いから今日はもう帰りな。お家で休ませてあげた方がいいよ。」

言われてみれば確かに悪い。

私は零斗くん起こしさっさと帰ることにした。

「零斗くん、零斗くん。」

「んん…。」

「もう、下校時間だから帰ろ?動けそう?」

「…うん。大丈…夫。」

先生に一礼し零斗くんを支え学校を後にした。

「無理だと思ったら言ってね。休憩して帰るから。」

「……」

返事はなかった。

聞いているの聞いていなのかは分からないが、

体調悪いのに怒るのもどうかと思い何も言わなかった。

「俺、家こっちだから。」

「え、ちょっと。ダメだよ。1人なんでしょ?心配すぎるから今日も私の家に止まりなさい!」

「いや…」

「いやもでももないの!はい、行くよ。」

私は嫌がる零斗くんを無理やり家へ連れ帰った。

家に帰ると直ぐにベッドへ連れていった。

「はい、病人は着替えてさっさと寝て。」

「本当に…いい…のか?明日朝には親…帰ってくるんじゃ…」

「あ、大丈夫大丈夫!帰ってくるの夜になったらしいから。」

そういってにっこり笑った。

そう、今日の朝メールが来ていたのだ。

なにやら仕事が押しているらしい。

「じゃ、私はお風呂入ってご飯食べて来るからゆっくり休んでなね!」

「おう。」

そして、私はお風呂へ入り全てを綺麗にして食卓へ付いた。

いつもは先に食べるのだが、今日は先にお風呂へ入りたい気分だった。

にしても、零斗くん3日続けて体調崩すなんてよっぽど疲れているのだろうか?

そもそも吸血鬼って体調悪くならないってよく聞くけどな…。

アニメとかドラマとかでよく見るし。

そんなことを悶々と考えながら片付けまで終わらした。

えーと、何準備しとこうかな。

おでこに貼るやつと、洗面器…後体温計!

あ、お水も居るかな?

トマトジュースの方がいいのかな?

両方持っていっておこう!

看病に必要なものを一通り揃えて部屋へ戻った。

ガチャ。

扉を開けると零斗くんは激しく肩を上下させ荒い呼吸を繰り返していた。

「零斗くん!?」

慌てて近寄ろうとすると、来るな!と零斗くんに怒られてしまった。

私はびっくりして立ち止まった。

「…はぁはぁ。喉が…乾く。だから…来る…な。」

ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

「どうして?」

「今日…は、満、月…はぁはぁ、だか、ら…加減、して、噛めない、し多分…めい、わく、かける…から…はぁはぁ。」

なるほど。

そういうことね。

私は零斗くんの隣に腰を下ろし零斗くんを抱きしめた。

「…おい…」

「吸っていいよ。」

そう言うと、我慢の限界だったのだろう、

私の肩に噛み付いた。

痛!?!?

いつも以上に痛かった。

ただ吸っている量は今でとあまり変わらなかった。

吸うだけ吸って零斗くんは意識を飛ばした。

満月。

満月の日は狼男が狼の姿になる。

そんな話を聞いたことがあった。

それと同様に吸血鬼も満月の日になると無性に喉が渇くということだろうか?

今日は少し荒くキツく吸われたためだろうか、

肩に空いた歯の穴から血が止まらず出続けていた。

洗面所行って綺麗にしよ。

そう思い私は洗面所へ向かった。

ガーゼで血を拭き取り大きめの絆創膏を貼った。

これでよしっと。

さて、戻りますか。

洗面所で手当を済ませ部屋へ戻った。

部屋の前まで来るとなにやら声が聞こえた。

あれ?零斗くん起きちゃったのかな?

起きているのは確かなようだが聞こえてくる声がおかしい。

急いで部屋に入ると苦しそうにしている零斗くんがいた。

「零斗くん大丈夫!?喉乾いて苦しいの?」

「…ちが…ヒュ!…かひゅっ…う…ヒュッ。」

過呼吸を起こしてる!?

必死に背中を擦りながら吐くことだけに意識させた。

「…はぁはぁはぁ…ごめん。」

「いいんだよ。寝れそう?」

「うん。」

零斗くんは気絶するかのように眠りについた。

私も寝れる時に寝ておこう。

夜中に熱が上がるかもしれないし。

そう思い私も眠りについた。

「ヒュッ…んー…うぅ…ヒクッ。」

んん…零斗くん?

ちらっと携帯で時間を確認すると1時間くらいしかたっていなかった。

どうしたんだろ。

ベッドを覗くと荒い呼吸を繰り返しながら泣いていた。

悪い夢でも見ているのだろうか?

そっと零斗くんのおでこに手を置くと先程よりも熱が上がっているような気がした。

熱…測っとこ。

起こさないようにそっと体温計を脇に挟んだ。

ピピピ。

え!?

私は体温計に表示されている数字を見てぎょっとした。

40.0…。

びょ、病院!

あ!?吸血鬼を病院へって…ちょっとまずいんじゃ…。

どうしよう…。

そんなことをもんもんと考えていると弱々しく袖を掴まれた。

「みぃ…ごめん。はぁはぁはぁ…起こした…よな…はぁはぁ…。」

「いや、全然大丈夫だよ!それより、かなりしんどいよね…。」

「だい…じょうぶ…はぁ…。」

絶対嘘。

40度で大丈夫なわけが無い。

「暑い?寒い?」

「…あ、つい…。」

暑い…てことは熱は上がらないね。

よし、おでこに冷たいの貼ろ!

私はそっと冷たいのを乗っけた。

「…気持ちいい…ふぅ…はぁ…」

「他に辛いところは?」

「……ない…。」

「ほんとに?嘘ついたら嫌だよ?」

「……うっ…ふぅ…あた、ま…いたい。
気持ち、悪い…はぁはぁ…。」

あちゃー重症だなこりゃ。

「吐きそうになったら教えてね!袋渡すから!」

零斗くんはコクっと頷いた。

「私そこで寝てるからなにかあったら起こしてね!」

そう伝え布団へ戻ろうとするとクイッと服を引っ張られた。

「…行かない…で。」

涙目で小さな声で呟かれた。

え?

驚きのあまり固まってしまった。

私が固まったのを見て何故か零斗くんは泣き出してしまった。

まるで、小さな子供のように。

「うっ…ヒクッ…ごめんなさい…ごめんなさい…。我儘でごめんなさい…。体調崩してごめんなさい…。…怒らないで…はぁはぁ…うぅ…怖…うぅ…ごめんなさい…はぁはぁ…。」

え?え?

「れ、零斗くん!大丈夫だよ!怒ってないから!ほら、泣いたら余計にしんどくなっちゃうよ?」

そう伝えてもずっと、ごめんなさい、怖いを繰り返して震えていた。

「大丈夫大丈夫!怖くないよ!よし!じゃ、私隣で一緒に寝るね!失礼します!」

私は零斗くんの隣に潜り込み抱きしめた。

「怖くない怖くない。」

トントンと背中を叩いているとスースーと眠りについてしまった。

しばらく続けているうちに私もいつの間にか眠ってしまった。
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