冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
プロローグ
「由卯奈、おいで」
世界中の砂糖を煮詰めたような、とにかく甘い甘い声で彼は私を呼ぶ。
そんな声なのに、そのかんばせはもとの端正さをひとつも損なっていないのだからすごい。
彼のそば──つまり寝室のベッドの上──に乗ると、寝心地のよいスプリングが微(かす)かに沈む。
横に並ぶ前に腕を引かれ、あっという間に組み敷かれた。
彼の瞳にはっきりと宿る情欲を目にして、胸が高鳴り、頬に熱が集まる。
「あ……」
恥ずかしくて口もとに手をあて目線を逸らす私の上で、彼は笑った。
「初心な顔をして。俺がそんな顔に弱いの、知っているくせに」
「だ、だって……恥ずかしいから」
「恥ずかしいなら煽っていい?」
彼の唇が首筋に落ちる。ゾクゾクと甘美な感覚が背中を走った。
「はぁ、……っ」
思わずみだらな声が出てしまう。彼はククッと喉の辺りで男性らしく低く笑った。
「ほんとに感じやすいよな」
「っ、違……」
「そうか、君は感じてないのか」
ちろりと舌先が肌を這う。なにか別の生き物のようなその器官は私の首筋を舐め上げ、さらに耳の裏を丹念に舐める。
ちゅくちゅくという音が耳殻越しに聞こえた。彼の掠れた、色気たっぷりの甘い声も。
「なら、君がきちんと感じられるように──がんばらないとな」
「そん、な……っ」