冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~

 彼の指が身体をまさぐる。
 すっかり彼の指先に慣れ親しんだ身体は、すぐに肌をしっとりと湿らせ、期待でお腹の奥を潤ませる。

「かわいい」

 思わず、といった雰囲気で彼はそう言葉を零す。

「かわいい、由卯奈、かわいい」

 それだけを何回も繰り返しながら、彼は私の肌をなで、キスを繰り返し、指と舌で何度も私を絶頂に導く。「感じてない」なんて嘘、わななき彼を求める身体を晒している以上、ただの強がりでしかない。

 キスを繰り返しながら、彼は言う。
 困った人だとばかりに眉を下げ、それでも微笑みを湛えた優しい表情で。

「なあ由卯奈、そんなにかわいい顔をしないでくれ。死んでしまうだろ?」


 頭の芯までぐちゃぐちゃで、きっと「かわいい顔」なんてしてない。
 快楽にゆがんでいるだろう私の頬をひとなでして彼は笑う。

 そうして幸せそうに私の名前を舌に乗せる。

「由卯奈、かわいい俺の奥さん」

 彼が浮かべる笑みの、その瞳の奥深くに見えるのは……

 ゾクゾクと背中に電気が走った。

 恋されているのでは、そう思ってしまうほどの強い感情が、彼の双眸に見え隠れする。
 ふと彼の声がワントーン低くなり、甘さがかき消えた。

「絶対に離さない」

 どうしてそんなことを言うの?
 かわいい、なんてささやくの?
 私は政略結婚の相手でしかないのでしょう?


 最初に「お互い干渉しない」と決めたのはあなたの方だったのに。


 惹かれてしまうから、優しくしないでほしい。
 甘く抱かないで。蕩けるような笑顔を向けないで。

 いつか終わらせるつもりのくせに。


 わかってる。


 これは、期間限定の蜜月。
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