冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~

 遮光カーテンの隙間から入り込む朝日に、瞼を上げる。

「ん……」

 眩しさに、まだ眠りを求めている身体はごく近くに──顔のそばにあった温かな体温に擦り寄る。どくん、どくん、と心音が聞こえる。

 安心する。

 髪の毛を、さらりさらりと梳いていく硬い指先。
 小さく誰かが息を吐き、微かに笑った。

 心地よい鼓動に再び眠りに落ちていきそうになり──そこでようやく気がつく。


「……ん!?」


 がばり、と起き上がろうとしてできなかった。誰かに抱きしめられていて──

「起きたか?」

 声の方を見ると、整いすぎるくらいに整っている直利さんの顔があった。まつ毛が触れてしまいそうな距離!

「は、ど、えっ? あのっ?」
「……しがみついて離れなかったから」

 昨日のことが嘘みたいに、彼の表情はまったく変わらない。淡々と言葉を紡ぐその視線は、驚くほど明後日の方を向いていて──ちょっと、寂しくなる。

「ご、ごめんなさい……」
「いや」

 直利さんが身体を起こす。ワイシャツにスラックス姿──昨夜は熱でぼうっとしていて気が付かなかったけれど、彼は着替えさえせず私の面倒を見てくれていたのか……。

 離れていく体温がやけに寂しい。

 直利さんは私を見下ろし、手のひらを私の額にあてる。そうしてほんの少しだけ、唇を緩めた。

「下がったみたいだな」
「あ」

 私は慌てて起き上がり、ベッドの上で正座をして頭を下げる。

「あ、ありがとうございました」

 直利さんはなにも言わずに、ただ私の頭をぽんぽんとなで、ベッドを降りて部屋を出て行く。
 私はベッドにへたりこんだまま、なでられたところを触ってみる。やけに熱い気がして──でもそんなことなくて。

「やだな、熱ぶり返したかな……?」

 頬が熱くて、両手で覆った。
 心臓がばくばくしているのは、どうしてだろう。
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