冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
おそらく佐野は由卯奈を落としたかっただけじゃない。どこかのタイミングで黒部総理の孫娘と知って、利用する目的もあったのだろう。
……彼女はまったく靡かなかったのだけれど。
「助かった、中川。礼は必ずする」
中川は曖昧にうなずき、頭を下げた。
「すみませんでした、芳賀さん。オレちゃんとがんばるって言ったのに……結局、こうなってて」
「ひとつだけいいか?」
顔を上げた中川に問う。
「出所してから、人は殴ったか」
中川はぶんぶんと首を振る。笑って見せると、少しだけ誇らしそうに彼は胸を張った。