冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
七章 極上の色彩
【七章】極上の色彩
お見合いをしたホテルでプロポーズをされてから一週間。
事件の幕引きはあっけなく、同時に私にとてつもない驚きをもたらした。
「佐野さんが……半グレ組織の幹部……?」
私は直利さんが淹れてくれたデカフェのカフェオレを飲みながら、ことの顛末を聞いた。時刻はすでに深夜と言っていい時間帯だ。在宅勤務のはずの直利さんがやけに出歩いていたのは、驚くことに黒部総理の濡れ衣を晴らすためだったらしい。
そうして逮捕されたのは鹿沼議員とベーカリーのオーナー、佐野さんだったのだ。
並んで座ったソファの上、直利さんは私を引き寄せてこめかみにキスを落とす。
「そうなんだ。危ないところだった……なにもされてないよな?」
「されてません! た、たしかに妙にスキンシップが多い人だなあとは……」
「君は好意に鈍感な気がするから、佐野のアピールに気が付かなかったんだろうな」
「鈍感……?」
「不幸中の幸いだ」
いまいち納得いかない「鈍感」を撤回することなく、直利さんは続けた。
「鹿沼議員は、黒部総理と総裁選で戦ったことがある……のは知っているか?」
「ニュースで見た記憶があります」
……うっすら、だけれど。
直利さんはうなずいて続ける。
「黒部総理さえいなくなれば、その地位に自分が就ける──そう考えたらしい」
「それでスキャンダルを捏造して?」
「自分がやっていることを転嫁するだけだったからな。偽造した書類なんかもあったそうだけれど、事前に俺の方で回収してあった──それから」
直利さんが私の顔を覗き込んで言う。
「千鳥が、悪かった。……ここに来たんだろう?」
「……あ」
「ああいうことがあれば、すぐに言ってくれ。俺は……君に頼られる男になりたい」
ぎゅっと抱きしめられて、私は膝の上で手を握りしめる。
私もあなたが好き、って言いたい。
けれど怖くて言えない。その途端に、またあの冷たいあなたに戻ってしまうんじゃないかって──。
「千鳥とももう顔を合わせることもないから安心してくれ」
「え? 会わない、ってことですか?」
遠縁とはいえ、親戚だし……でも、千鳥さんのお父様は逮捕されてしまっているのか。それゆえに絶縁ということ?
直利さんが私の髪をなでて言う。