冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
「それもあるし、物理的にというか……彼女も逮捕された」
驚いて彼を見上げる。直利さんは淡々と続けた。
「今回の裏金の件、主導して動いていたのが千鳥だったんだ。いくつかの罪に問われることになると思う」
翌日のワイドショーは、昨日までの黒部総理バッシングとは打って変わっていた。責任を取って退陣を!と迫っていたコメンテーターが『黒部総理はご不安だったでしょうねえ』と舌の根も乾かぬうちに手のひらを返した。
私はひとり、ホッと胸をなで下ろす。
これで私はまだ、直利さんにとって利用価値がある人間でいられる。
まだ彼のそばにいられる。
ほとんど無意識に、左手の薬指を見つめた。結婚指輪の上にはめられているのは、直利さんが改めてプロポーズしてくれたあの日もらった婚約指輪。結婚指輪と婚約指輪の順番が逆なんて変なのだけれど、でも……とっても、嬉しかった。
彼のことは大好きだ。多分、愛してるんだと思う。優しくされて嬉しいし、甘くされてときめく。
だけれどまたあの無関心な視線を向けられたら、と思うと素直になれない。
愛される幸せを知ってしまったからこそ、言えない。心からは認められない。だって彼を愛してしまった今、また冷たくされたら、心が砕けて死んでしまうから。