逃げても逃げても追いかけてくるの
桃が……血だらけで倒れていたからだ。

目を大きく見開いている状態の桃は
首がおかしな方向に向いていて
静かに私と目が合った。

合った、といっても、

桃の目は焦点が全く合っていなくて、
まるで別世界に居るみたいだ。

「うっ……」

変わり果てた姿の桃に私は
思わず口を抑えて目をそらす。

「架乃……っ、大丈夫か?」

「……」

翔が私の両肩を支えるけれど、
翔の手も微かに震えていた。
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