逃げても逃げても追いかけてくるの
「じゃあ、あんな化け物が
現実にいるっていうのかよ!」
陽介が髪の毛をぐしゃっとさせて、怒鳴る。
苛立っているのが丸わかりだ。
けど多分。
それは陽介だけじゃない。
ここにいる全員。
よく分からない、今のこの状況に
戸惑っているか、苛立っているか、の
どちらかが気持ちの大半を占めている。
「じゃあどこまでが現実なの!?
桃が…、死んだっていうのは、現実…、
なの?」
きっと、そこだけは夢じゃなければいいのに。
と誰もが思っただろう。
「……」
寂しげに配置されたガラ空きの桃の席に
みんな、無言で目を向けた。