逃げても逃げても追いかけてくるの
自分の体が地面に引きづられる音に
かき消されそうになりながら、そう言った。

けれど陽介はそんな言葉を
簡単に突き飛ばすかのように叫ぶ。

「さっきの仮…っ、
まだ凛に返して無かったんだよ!」

「…っ、」

仮…

雪子先生にやられた、
と言っていた凛の怪我の事だろう、
とすぐに分かった。

陽介はどこか責任を
感じているみたいだったし、

本来陽介が刺されそうになったのを
凛が庇った、とか
そんな感じの状況だったのだろう。

私だって清水さんに殺されそうになった時
翔に助けてもらった。

陽介なりに
ずっと引っ掛かっていたのかもしれない。
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