逃げても逃げても追いかけてくるの
「架乃……」
翔がそっと私の名前を呼ぶ。
「え……っ、どうしたの」
不穏な空気を感じて…。
いや。
私は何も感じてない。
だけど
翔は……、
翔だけは何かを感じているような、
そしてその何か、は
あまり良くない事……かもしれない。
と。
私達を正面から包み込むようにして
優しく吹き付ける……
潮の匂いが滲む風を持ってしても、
それは、消し去る事が出来ていなかった。