実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

 レザール様の顔は赤い。ものすごく怒っているのだろうか。
 口元を押さえているのは、怒りたいのを我慢しているのだろうか。

(可愛いわ。レザールきゅんのよさは、見た目ではなくてその、可愛らしすぎる言動なのですもの)

 レザール様は、どうにか気持ちを落ち着けたらしい。
 真面目な表情をこちらに向けた。

「そうですか、特別なら仕方ありません。では二人きりの時にはそう呼んで下さい」
「えっ、公式からのご許可が!?」
「……こうしき?」

 この日から、私は、レザールきゅんを堂々と見守ることを許された日々が始まるのだった。

「さ、呼んでみて下さい?」
「いざ許されると、本人を前に呼ぶのは恥ずかしいのですわ!?」
「ふふ、特別、なのでしょう?」
「うっ、からかわないでください!?」

 濃厚な周辺人物たちに翻弄されながら。
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