実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
元悪役令嬢と年下王子
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とりあえず、屋敷に戻ってきた私を見知った顔が出迎える。
「お帰りなさいませ。若奥様」
「セバスチャン……」
そこには、リーフ辺境伯の乳兄弟であり、長年辺境伯家の執事として仕えてきたセバスチャンがいた。
「えっと、どうしてここに?」
「若奥様をお助けするというのが、旦那様との最期の約束です。ああ、もう若奥様とお呼びするのは違うような気がいたしますね。フィアーナ様とお呼びいたしましょうか」
「旦那様が……?」
危うく私の涙腺は崩壊しかけた。
リーフ辺境伯には、私の境遇を全て話している。
王都に戻ってくれば、実家があるといっても、関わればたぶんもう一度結婚しろと言われるだろう。
それに、記憶を取り戻した時から、二つ分の記憶がある私にとって、疎遠だった公爵家の父や兄よりもリーフ辺境伯こそが、本当の家族に思えた。
「ささ、バスタブの用意が出来ておりますよ? 食事も、買ったものばかりで済まされていたでしょう」
「……セバスチャン!!」