実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
「レザール様……」
大人びたその姿は、けれどまだ少年のように危うくもあり。
その姿をよく見ようと、双眼鏡で覗いてしまったのは出来心としか言い様がない。
そして今夜も、もちろん双眼鏡の中の彼と目が合う。
魔術師団本部の敷地は広大だ。
だから、いくらこのお屋敷が魔術師団本部の建物から近いといっても、向こうからは私のことは豆粒くらいにしか見えないはずだ……。
レザール様は、こちらに透明な湖みたいな瞳を向けたまま、なぜか微笑んだ。
私は双眼鏡を取り落とし、慌ててカーテンを閉める。
「な……。なにこれ」
弾む心臓に戸惑いながら、胸をギュッと両手で押さえつける。
この感情を私は、すでに知っている。
「月光の下で、淡い水色の髪が輝いて、あまりに幻想的……」
そうこれは、間違いなくあの時と同じ感情だ。
「私、今日も心のアルバムに、レザールきゅんのスチルを加えてしまったのね……」