実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
レザールきゅん推しだった違う世界の私が、両手の平で顔を覆って身もだえている。
乙女ゲームをすすめて、麗しすぎるレザールきゅんのスチルを手に入れたときの激情。
まさか実物を見てすら、こんな風に胸が苦しくなるなんて知らなかった。
満足のあまり、そこまでで眠気が襲ってきてしまった私は、ベッドに潜り込んだ。
万能執事は、シーツも全て洗濯の手配をして整えてくれたらしい。
シャボンの香りに包まれたその夜、私は満足感いっぱいで眠りについたのだった。
***
「――――お姉様」
そう、眠る直前にレザール様の笑顔を見たからに違いない。
目の前には、私よりも頭一つ分背が低く、まだ声にも幼さが残った、可愛らしい一人の少年がいた。
淡い水色の髪の毛と瞳。
キラキラ輝いて、まっすぐにこちらを見つめる瞳は、影が出来るほど長い髪の毛と同じ色の睫で縁取られていた。
「…………レザールきゅん」
「…………お姉様?」
無邪気に私のそばによって、不思議そうにこちらを見たその姿は、間違いなく乙女ゲームの中のレザール・ウィールディアそのものだった。