実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
応接室には、なぜかレザール様が座っていた。
レザール様が飲んでいるのは、ブラックコーヒーだ。
三年前にお茶会をしていたときには、ミルクティーを飲んでいたはずなのに、やはり大人になってしまったようだ。
「……おい、なんでそんなに残念そうなんだ」
「まさか、残念だなんて。成長を喜ぶべきなのですわ」
「……よく分からんが」
ロレンス様は、三年間少なからず一緒に過ごしていただけあって、私のことがよく分かっている。
そんな私たちを前に、レザール様は席を立った。
ロレンス様は、王族に対する礼をするべく膝をつく。
「ロレンス・リーフと申します。レザール・ウィールディア殿下にご挨拶申し上げます」
「――――ロレンス・リーフ殿。どうか立ち上がってください」
レザール様から差し伸べられた手をロレンス様は、しっかりと掴んだ。
ロレンス様は、今や大陸中を飛び回る魔道具師。
そして貴族籍を返上していたお父様が辺境伯家を継ぐということは、今後は広大な領地を治めるリーフ辺境伯家の令息として生きていくことになる。