実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
(それはともかく、二人並ぶとものすごく絵になるのよね……)
ロレンス様の黒い髪と金色の瞳。
金色の瞳は、隣国の王族から血を継いでいる証拠でもある。
真面目な顔をしていると、切れ長の瞳、整った鼻筋のロレンス様は、ものすごい美形だ。
一方、レザール様の淡い水色の髪と瞳は、夜に輝く神秘的な星のようで、男らしい中にもどこか幼さを残す笑顔は言うまでもなく絶世の美男子と言っていいだろう。
(どうして、ロレンス様が攻略対象キャラクターでなくモブだったのかは、世紀の謎だわ)
……ちなみに、私の真っ赤な髪と金色の瞳も、隣国の姫君だったお母様から受け継いだ。
隣国については、乙女ゲームの中では詳しく語られてはいない。
けれど、ウィールディア王国に並ぶ大国で、両王家はお互いに血縁を結び、深い関係にある。
そういう意味でも、隣国に国境を接し、隣国の血を強く受け継いでいるリーフ辺境伯家の立ち位置は、王国でも重要だ。
「レザール様、そういえば本日はどんなご用件で?」
「…………フィーリアに会いたくて、という理由で訪れるのはダメですか?」
「っ……!? 大歓迎ですわ!!」
推しにそんなことを言われて、ダメだなんて言える人はいるのだろうか。
否、いないに違いない。
「そうですか。……よかった」
レザール様の微笑みは、全大陸中が恋に落ちてしまうほど甘く麗しい。
あまりの麗しさに、思わず『レザールきゅん!!』と叫びたくなってしまったが、ロレンス様がいらしているのでなんとか思いとどまったのだった。