実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
(同担拒否では、なかったはずなのに……。どうしてしまったのかしら、私)
物思いに沈んでいると、肩をポンッと叩かれて飛び上がる。
手を掴まれたまま、そちらに顔を向けると、ニカッと今日も人好きのする笑みを見せたロレンス様がいた。
「とりあえず、帰るな? パーティーには、レザール殿下が連れてきてくれるというなら安心だ」
「……えっ、ロレンス様!?」
この状況で二人きりにしないで欲しい、と困惑する私を置いて、ロレンス様は部屋から出て行ってしまった。
なぜか、真剣な顔で私の手を離してくれないレザール様。
その顔が、ほんの少し赤い気がするのは、気のせいなのだろうか。
「……俺がパートナーでは、お嫌ですか?」
「で、でも。私は、今度のパーティーは、リーフ前辺境伯夫人として参加を」
優しいけれど振りほどくことが出来ない力で掴まれていた手が、そっと持ち上げられる。
呆然としているうちに、落ちてきた口づけ。
「――――リーフ前辺境伯は、立派な方だった。あなたと彼の関係は、よく分かっているつもりです……。それでも、もうその名は聞きたくない」
「それはいったい……」
「……俺はもう、唯一大切だと思ったものを誰かに譲る気はないんです。それでも、あなたが嫌だというのなら……」
大好きな推しのことを嫌だと思うはずなんてない。
事実、なぜか潤んだような一目で私のことを見つめている姿に、動悸がして仕方がない。