実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
「王都のお屋敷と、一生暮らせるだけのお金も手に入れたわ」
私は、燃えていた。リーフ辺境伯夫人。この名を手に入れた私。
もう、以前のように同意なく結婚させることは出来ない。
「推しを……。推しを遠くから思う存分愛でることが出来るわ!?」
去って行く私のことを、領民たちが取り囲んで別れを惜しんでくれる。
私が嫁いできてからの三年間で、辺境伯領は見違えるほど流行の最先端になった。
転生知識を生かしたのだから当然だけれど、少しやり過ぎたかもしれない。
遺産は全て、リーフ辺境伯のお孫さんに渡す予定だけれど、転生知識で得た個人資産は潤沢だ。
だから、これからは、この乙女ゲームで私が大好きだった推しを思う存分眺めることが出来るのだ。
「末の王子……。レザールきゅん!!」
悪役令嬢としての記憶を思い出したのは、残念なことに断罪直後だった。
記憶を取り戻す前の私も、可愛く慕ってくれる年下のレザール様をとても可愛がっていた。
けれど、年が違うので卒業式には参加していなかった彼の姿を見ることは出来ないまま、辺境に来ることになってしまったから……。
攻略対象者の中で、唯一の年下枠。
ヒロインよりも背が低いけれど、正義感が強く魔法の能力は王国一とも言われている天才。
「さあ、いざ王都に行くわよ!?」
最新鋭の馬車に乗り込んで、私は王都へと旅だったのだった。