実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「忙しいのではないの?」
「……どんなに、この日を待ちわびていたことか」
「え?」
「当日、フィアーナ様は、誰よりも美しく、社交界の注目を一身に集めることでしょう」
「え?」

 確かに、メルリスが作ったドレスなら、社交界の注目を一身に集めることが出来るだろう。
 でも、それはドレスの話だ。私ではないはず。

「王都で美容に関する人脈は、完璧に作っております。お任せくださいませ!」

 それから一週間、私は磨きに磨かれることになるのだった。

 ***

 そして一週間後。
 目の前には、王族としての白い正装に青いマントを身につけたレザール様がいた。
 このお姿を見るのも三年ぶりだ。

(この正装は、レザール様の為に作られたのではないかしら……)

 三年前は、ものすごく可愛らしかったけれど、今はおとぎの国の王子様が絵本から抜け出してきたみたいだ。
 こんなの、会場中の注目を集めてしまうに決まっている。

 それなのに、なぜかレザール様は、私のことを凝視したまま、ピクリとも動かない。
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