実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「えっと……。レザール様?」
「これは……。誰にも見せたくないな」
「え!? そんなにお見苦しかったでしょうか!?」

 赤い髪の毛はハーフアップにして、派手になりすぎないようにシンプルな銀の髪飾りをつけた。
 少しつり目がちな金色の目は、今は優しいブラウンのラインを引いて、猫のようになっている。
 唇はあえてつやを出しただけだ。

 ほんの少しだけ、水色を取り入れたドレス。
 水色は、王都で一番はやっている色だと言うことで、主任デザイナー、メルリスが強くすすめてきたけれど、レザール様の色とよく考えたらかぶってしまっている。

「女神」

 そのまま恭しく手の甲に口づけを落としたレザール様。
 レザール様は、パーティーが始まる前から完璧なのだな、と私は密かに感心したのだった。

(褒め言葉が見つけられないからって、「女神」のひと言だけというのが、嘘をつけないレザールきゅんらしいわ)

 立ち上がったレザール様から差し伸べられた手を取り、私は久しぶりに貴族としての仮面をかぶって微笑んだのだった。
 
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