実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
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「さあ、お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
馬車から下りる私に、王子様が手を差し伸べる。
比喩ではなく、本当の王子様というところがすごいと思う。
「…………」
「どうしました、フィアーナ」
そう言って、流れるように私をエスコートしながら問うてくる、レザール様がまぶしすぎる。
メインヒーローの王太子殿下と、あまり似ていない甘いほどの美貌は、少し微笑んだだけで倒れる貴婦人が続出しそうだ。
「…………気を取り直して。あの、レザール様? 前辺境伯夫人である私が、レザール様とパーティーに参加するなんて、やはり問題があるのではないかと」
「……ご迷惑でしたか」
意気消沈したように、肩を下げてしまうレザール様。
そういえば、王太子の婚約者だったときにも、レザール様のこの表情と態度に、私はすぐに折れてしまった。
フィアーナと前世の私。
どちらの私も、レザール様には弱いに違いない。