実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「違います。そもそも、私の評判なんて地に落ちています。でも、レザール様はようやく手に入れた魔術師団長の地位、そして名声を」
「……そんなもの、全て捨てたって構わないんですよ」
「え……?」

 レザール様は、王宮で母を亡くして不遇な王子と言われていた。
 けれど、今は確固たる地位、そして名声、全てをほしいままにしている。

「――――すべて、たった一人のためでしたので」
「え……!?」

 じっと見つめたレザール様の表情は、王子様の仮面をかぶってしまってよく分からない。
 それほど、大事な人がいるのだろうか。

(つまり、その人のために全てを捨ててもいいほど愛しているのね。でも、その人とはパーティーに来ることは出来ない。なるほど)

 レザール様は、噂で名誉が傷つこうと、その人だけが好きなのだろう。
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