実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
「さ、行きましょうか」
「はい……」
会場の中心には、初めてお会いするリーフ前辺境伯の息子。
「初めまして。フィアーナ・リーフです」
「こちらこそ初めまして。バラード・リーフです。父や息子からの手紙にいつも書かれていたので、初めてという気が致しません」
そして、私よりもずいぶん年が上だけれど、義理の息子。
笑った顔は、リーフ前辺境伯にそっくりで、目頭がツンとしてしまう。
けれど、今は泣いている場合ではないし、それよりも気になることがある。
「手紙?」
「ええ。恥ずかしながら、愛する人と添い遂げるために駆け落ちしましてね。父とは疎遠になっていたのですが……。あなたがリーフ辺境伯領に来てくださってから、父から手紙が届くようになったのです」
「そうだったのですね」
「しかし……。その髪に、その瞳。よく似ている」
私を見下ろす瞳は、金色でどこか懐かしいものを見るように細められている。
その視線は、私を見つめるリーフ前辺境伯が時々していたものだ。
「誰に、似ているのですか……?」
「ああ、父はあなたに言っていなかったのですね。とても、母によく似ていると」
「…………奥様に」
初めのうちは、縁もゆかりもないはずの私をあんなにも助けてくれたことを不思議に思っていた。
亡くなった奥様に似ていたからなのだろうか。
確かに、ゲームの設定にはのっていなかったけれど、私の母は隣国の姫君で、リーフ前辺境伯の奥様は、隣国の王族、母の伯母だ。
私と奥様は血が繋がっているし、隣国の王族を現わす髪と瞳を持っている。