実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「まさか、レザール・ウィールディア殿下が、幼い頃からずっとフィアーナ様を慕っていたとは」
「へ?」

 寝耳に水とは、このことだろう。
 レザール様が、ずっと私を慕っていた?

 その言葉を心の中でもう一度繰り返してみる。

「そ、それは、まさか」
「今、王都の話題の中心ですよ。言われなき罪で貶められた思い人を救うために、レザール殿下が奔走したと。それに心を打たれた父が、隠れ蓑として名乗り出たそうですね?」
「……!?」

 レザール様の腕に掴まったまま、顔を見ることが出来ない。
 そんな噂が立って、その私がレザール様の腕にしがみついている状況。

(噂は真実ですって、周囲に知らしめているようなものじゃない!!)

 せめてレザール様から距離をとろうとしたのに、なぜか逆にぐいっと引き寄せられて、もたれかかるみたいになってしまった。

「全て事実です」
「へぁ?」

 レザール様の淡い水色の瞳が、私をまっすぐに見下ろした。

「……密かにずっと、お慕いしていたので」
「……」

 レザール様は、それだけつぶやくと、私に微笑みかけた。
 ざわめきが広がり、改めて会場中の注目を浴びてしまっていたことに気がつく。
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