実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。


 王都のお屋敷は、そこまで大きくはないけれど、レザール様の所属する魔術師団の本部近く。
 きっと、レザール様のお姿を毎日拝見できるに違いない。

「私のように噂の渦中にいた人間が見ているなんて、決して気づかれてはいけないけれど……。うふふ」

 魔法の力を組み込んだ双眼鏡片手に、魔術師団本部の正面玄関を眺める。
 まだ、薄暗い早朝。正面玄関に現れたのは、背がとても高く淡い水色の髪をした美しすぎる男性だった。

(あら……? レザールきゅんと同じ色合いだわ?)

 双眼鏡で覗きながら、私は首を傾げる。
 その時、その男性が、髪と同じ色をした薄い色素の瞳をこちらにまっすぐ向けた気がした。

「…………目が合った」

 それが、気のせいだと思おうとしたのに、なぜかその人は私から目をそらすことなく、ものすごく美麗な微笑みを見せる。

「…………え? カッコいい、じゃなくて明らかに私に気がついていた?」

 頭の片隅で『スチル』という単語がよぎる。

 魔術師というのは、不思議な力で遠くにいる相手の気配まで分かるのかもしれない。
 そう結論づけた私は、推しへと思いをはせる。

 レザール様とは、記憶を取り戻す前、王太子の婚約者だったときによく関わっていた。
 当時は、「お姉様!」なんて言って、可愛い姿で慕ってくれていた。

 けれど、私は三年という月日を甘く見ていたのだ。
 そう、三年間離れていれば、年齢差は変わらなくても、身長差なんてものは逆転してしまう。
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