実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
レザール様は、笑っているけれど、その表情には憂いがにじんでいる。
かつて、フィアーナのことを「お姉様」と呼んで会いに来てくれたレザール様は、いつだって幸せそうに笑っていたのに。
「笑って欲しいな……」
「え?」
口をついて出た言葉。
そう、私はレザール様に笑っていて欲しい。
それは、いつだって共通している私の気持ちだ。
「そう……。恋とか愛とか分からないけれど、私はレザールきゅんが誰よりも大好きで、幸せそうに笑っていて欲しいんです」
「…………」
レザール様の両手をギュッと掴む。
もしも、その笑顔が見られるなら……。
「そうすれば、きっと私は幸せなのだと思います」
たぶん、今私が見せている笑顔は、心からの……。
その瞬間、離れてしまった両手を目で追う。
その手はそのままレザール様の口元を隠した。
暗いはずなのに、その頬はハッキリと赤い。
「…………」
「…………」
数秒の沈黙は、次の瞬間私を抱きしめた両腕にかき消された。