実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「あ、の……?」

 誰しもが、私が自由に興味があることをすることに、いい顔をしなかった。
 前世の私も、フィアーナとしての私も、誰かが決めたとおりに生きてきた。

「毎日が、とても楽しいよ」
「え?」

 ゴシゴシとこすられた頬。
 黒く汚れてしまった白いハンカチ。
 それなのに、目の前にいる人が私に向ける視線はとても穏やかだ。

「だが、魔道具開発には専門知識が必要だ。一人、その道で活躍する優秀な人間に心当たりがある。…………連絡を取ってみようかな」
「ぜひ!!」
「…………うん、多分僕もそろそろ折れなくてはいけない。今回は、いい機会なのだろう」

 一瞬だけ、なにかを懐かしむように、少しだけ苦しそうに眉を寄せたリーフ辺境伯。
 けれど、すぐにその表情は、いつもの穏やかな笑顔に掻き消された。

「それでは、彼が来るまで魔道具開発は休みにして、僕と読書でもしよう」
「……読書!」

 私は、本を読むのも大好きだ。
 辺境伯邸には、貴重な蔵書がたくさんある。
 貴族令嬢には必要ない、といわれていた魔道具の本も、魔法の本も、恋愛小説まで自由に読むことが出来る。
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