実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
うわさの前辺境伯夫人
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王都で今一番話題になっている人といえば、リーフ前辺境伯夫人だろう。
レインワーズ公爵家の長女として幼い頃から王太子の婚約者に定められた彼女は、しかしえん罪により社交界から姿を消した。
だが、天才とも言える彼女の才能は、逆境に花開く。
他に類を見ない新しい発想のドレスや化粧品。流行は今やリーフ前辺境伯夫人から発信されている、と言っても過言ではない。
それに加えて王国の魔道具研究を二世代は先に進ませたとも言われる才能。
そんな彼女が、魔術師の最高峰にして美貌でも知られる末の王子、レザール・ウィールディアを伴って社交界に戻ってきた。
「え、誰その人」
「フィアーナ様以外に当てはまる方を私は存じ上げません」
「――――セバスチャン」
もっと手軽に本が読みたいと開発し、結果瞬く間に普及した活版技術。
そのおかげで、私の手元には今、新聞がある。
王都で流行している新聞。その中には、ゴシップ記事も多い。
一面にでかでかと載せられているのは、レザール様アルバムを作ろうと研究していた写真だ。
まさか、私の写真がこんな風に載せられることになるとは予想だにしていなかった。
「あ、後ろにレザールきゅんが写っているわ! 切り抜いておかないと!!」
自分の後ろにレザール様が写っていることに気がついた私は、一旦現実から目を背けることにした。
「レザール・ウィールディア殿下に写真を撮らせてくださるようにお願いしてはいかがですか?」
「ふふ、分かっていないわね! 不意に写ったレザールきゅんの素顔! そして、最高の表情! スチルというのは、努力と運の末に手に入る得がたい宝物なの!!」
「そういうものなのですね……」
にっこりと微笑んだ老執事は、さらりとそう答えると、はさみとのりを用意してくれた。
セバスチャンは、今日も完璧な執事だ……。
「それにしても……。困ったことになったわね」