実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「…………お慕いしていた、と言ったら、信じていただけるのでしょうか?」

 どこか愁いを帯びたその表情は、私が知っているレザール様のものではないみたいだ。

「え? 慕う……? え?」
「あの時の俺は、力を持たず、あなたをえん罪から救うことが出来なかった。あれほど、己の無力を悔いたことはありません」
「…………え?」

 王立魔術師団長に上り詰めているレザール様は、今はもう王国軍の中心人物だと見なされているらしい。
 そして、ものすごくもてるのに、女性に興味がないのかというくらい浮いた噂一つなく、恋人も婚約者もいないという……。

 魔術師団長として戦えば、誰よりも強く、いつも戦いに明け暮れているらしい。

 なんとか私が集めた噂話は、それだけ。
 なぜか社交界にもほとんど姿を現わさないという末の王子。レザール様の情報はほとんどなかった。

「会いたかった」

 レザール様は、切なさを滲ませて笑ったように見えた。

「……レザール様」
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