実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

「……リーフ前辺境伯夫人との婚姻をお許しください」
「……王族が、他の人間と婚姻関係にあった者と結婚することは出来ない。ましてや、廃嫡となった王子の婚約者だった女性だ」
「――――俺は、それ以外の何も望みません」
「……そうか」

 会話に入ることも出来ないまま、切り上げられてしまった問答。その意味は。
 急に国王陛下は椅子から立ち上がって、こちらに歩み寄った。

「……これから先、王族を名乗ることはないのだな」
「ええ、そうですね。彼女を迎えるためにふさわしい位を与えてくだされば」
「ウィールリーフ公爵を名乗るがいい。北の地を与えよう」
「……ありがたき幸せ」

 北の地とは……。
 意味が理解できないまま、レザール様を見つめていると、少し暗い瞳がこちらを向いた。
 北の地って、魔獣ばかり出てくる、レザール様ハッピーエンドで、悪役令嬢が送り込まれる……。

(えっと、エンディングでは一行だけ、そこで悪役令嬢は魔獣に襲われて命を失ったと……)

「あ、あの……」
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