実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
物語は、まだまだ続くというのだろうか。
悪役令嬢の断罪先に末の王子を巻き込んでしまったのではないか。
震えていると、国王陛下が信じられないことを言う。
「北の地、ウィールリーフ。以前であれば魔獣で危険だったあの地は、レザールを筆頭に平定された。鉱物資源も豊富だ。誰かほかの人間に渡してしまうのは、惜しいからな。よい大義名分になるだろう」
「……ええ」
レザール様について、集めたときに一番初めに手に入れた情報が脳裏をよぎる。
――魔術師団長として戦えば、誰よりも強く、いつも戦いに明け暮れているらしい。
(それって、もしかして北の地を平定するためだったの?)
「陛下。話は以上でよろしかったでしょうか……」
「いや、もう一つある」
深刻な表情と声音。
知らずに緊張が走る。
「聖女が、幽閉されていた塔から姿を消した」
「すでにその情報は、耳に入っております。管理が行き届いていなかったこと、魔術師団の長としてお詫び申し上げます」
「……気をつけろ」
「ありがとうございます。……父上」
「はは。お前に父と呼ばれるのは、初めてだな。レザール」
「それでは、失礼いたします」
それだけ言うと、レザール様は私の手を引いて、国王陛下に背を向けた。
北の地と言う言葉だけがグルグルと頭の中で反響し続けている私は、黙って手を引かれるしかなかった。