実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
悪役令嬢の運命が変わった日
王宮を出るまで、レザール様は表情を緩めることはなかった。
それでも、私の手は強く握られたままだ。
そのまま、馬車に乗り込んで、強く緊張していたことをようやく自覚する。
「――――レザール様」
「申し訳ありませんでした」
「え?」
巻き込んでしまったことを謝るのは、私の方なのに……。
なぜか、私に目を合わせることもなく謝罪してきたレザール様を見つめる。
「……あなたの意思を確認することもなく、婚姻を願ったことをお詫びします」
「そういえば、そうですね」
「え……?」
悪役令嬢としての追放先である“北の地”という言葉が出てきたせいで動揺してしまった。
再婚よりも、北の地をレザール様が与えられたことの方が重要に思えてしまった。
(だって……。まだ、レザール様に言えていない)
私に、ここではない世界の記憶があることを知っていたのは、この世界にただ一人しかいない。
その人は、もういない……。
「レザール様……。私、変わったと思いませんか?」
「どうしたんですか、急に……」
この世界が、乙女ゲームの世界だって、レザール様に話すのは怖い。
幼い頃から、公爵家令嬢フィアーナを好きだったのだとしたら、今の私はレザール様が好きだったフィアーナだといえないかもしれないから……。