実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
でも、真実を伝えないままに、再婚なんて出来るはずがない。
唇をかみしめた私の頬をレザール様の手が包み込む。
少しだけ眉を寄せた顔。それすら、とても美しくて……。
「唇が傷つきますよ?」
頬に触れたままの手。その親指が唇をなぞる。
触れられた場所に熱が集まって、知らずに力が抜けていく。
「あの……。私が変わった、ということについてですが」
「フィアーナは、なにひとつ変わらないですよ。今のあなたこそが、俺の知っているフィアーナです」
「それはいったい……」
「……話したいことがあるのでしょう? あなたが教えてくれることなら、全て知りたい」
そう言ってレザール様は、私を安心させるみたいに笑った。
その笑顔は、ほんの少し幼くて、閉ざされてしまった記憶の扉を開くみたいだ。
(そういえば、レザール様と初めて出会ったのは、いつだったのかしら……)
レザール様と私は、年の差4歳だ。
初めて会ったのは、王太子殿下の婚約者になったお披露目の席だったと思うけれど、それより前にも会ったことがあるような……。
(ううん。今はそれよりも)