二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
プロローグ
「妊娠、おめでとうございます」

 予想外すぎる医師の言葉を、小森香澄は呆然と聞いていた。

「今、何と……?」
 
 言うべき言葉が脳内で渋滞してしまっている香澄の代わりに、医師に問いかけてくれた存在が、今香澄の側には何故かいた。
 その人は、一目見ただけで高級だと分かるダークスーツと紺色とアイスブルーのストライプネクタイがよく似合っている、清潔感ある短髪とぴんっと伸びた背筋がとても綺麗な男性だ。

「奥様は、今妊娠3ヶ月に入ったところですね。まだ安定期ではないので、無理はさせないようにお願いしますね」
「そうですか。分かりました」

(待って!?分かりました、じゃないですよね!?)

 香澄は今自分の真横に座る、本来ならここにいるはずがなかった存在にどうにか語りかけようと、必死に口を動かした。
 しかし、生来の口下手もあり、うまく声に乗せることができないでいた。

「彼女は……もう連れて帰っても?」
「はい、受付でお待ちください」

 そのやりとりの後すぐ、香澄の真横の綺麗な男性は、香澄の手を取り、ゆっくりと立たせながらはっきりと香澄に告げた。

「この後、僕たちはじっくりとお話をする必要があるようですね…………奥さん」
「は、はいぃ……?」

 ちなみに、この男性と香澄が会ったのは今日で2度目で、香澄に至ってはこの男性の名前が芹沢涼であることを初めて知ったという始末。
 そんな2人ではあるのだが、香澄のお腹の中にいるのは間違いなくこの2人の間に芽生えた赤ちゃんだったりする。
 では何故、こんな2人の間に赤ちゃんが宿ることになったのか。
 話は、少し前に遡る……。
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