二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
 12月24日 20時すぎ。
 香澄の目の前には、煌びやかな都心の夜景が、光の海のように広がっている。
 普通の女であれば、涙が出るほどの美しい光景だったろう。
 けれども香澄は、今全く別の事で脳内を支配されている。
 
「お客さま」
「は、はいぃ……」
「食前酒は、スパークリングワインで宜しかったでしょうか」
「な、何でも……よろしいでございます」
「……かしこまりました。すぐにご用意いたします」

 とってつけたように準備をした、学生の女の子達が身につけるような1万円もしないワンピースを身につけた香澄よりもこの空間がとても似合う、イケメンギャルソンが真横に立ち、丁寧すぎる接客をしてくれる。
 そんなことだけで、香澄の緊張レベルが一気に10は上がってしまう。

(やばい……脇汗がすごいことになってそう……)

 香澄が座っているのは、カップルで予約した人しか座れないバルコニーシート。しかも、この席の人が注文できるのは、2人で2万円するコース料理のみという、普段の香澄であれば近づくことすら出来ない、まさにカップルのための聖域。
 そんな場所に、何故香澄がクリスマスイブと言う特別な日に来られたのかと言うと……。
 
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