二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
「ど、どどどどうして……」
「香澄?香澄だね?」
「っ!?」
香澄は、驚きのあまり声を出してしまった。
そのせいでインターフォン越しに、香澄が家の中にいることが易々とばれてしまった。
香澄には、この時点でやはり2つ、気になることがあった。
1つ目は、何故「リュウ」を彼が持っているのか。
2つ目は、何故この家に自分がいることが分かったのか。
表札は確かについているけれど、マンションからはとても離れているエリアをピンポイントで当てに行くのはまず不可能だ。
(どうしよう……)
できれば、このまま涼とは距離を取りたいと思っていた。
もしかしたら母親の離婚の件でお世話になることもあるかもしれない。
だとしても、プライベートではもう、これ以上関わりたくないと思っていた。話してはいけないと思っていた。
(でないと……本当に……)
「香澄?そこにいるんだよね」
「あ、あああの……」
香澄は、これが最後という気持ちをこめて、こう言った。
「その手に持ってるノート……!ポストに入れておいてください」
マンションではなく、一軒家である香澄の家。
せめてオートロックだったら、距離もあるのでそこまで香澄は緊張しなかっただろう。
でも、玄関のドア越しとはいえ、10mもない距離に涼がいる。しかも、彼をモデルに描いた、香澄の彼への想いを詰め込んだ「リュウ」も彼の手にある。
その事実が、香澄をより緊張させた。
そのためだろうか。
香澄の体調は、このタイミングで一気に具合悪くなり始めていた。
(立ってるのが辛い……)
でも、モニターを見ていると、涼はしっかりとカメラを見つめているだけ。
香澄の希望を叶える動きはしない。
「お願いします!そのノート、返してください……!」
「香澄、とにかく僕と1回話をしよう」
「返して!返してください!」
もう、この時の香澄には、涼の声が届いていない。
会話が噛み合わない状態がしばらく続いてしまう。
ただ「リュウ」を……これから先死ぬまで自分の恋人でいてくれるであろう存在を、今すぐに返して欲しいという香澄の焦りと、具合の悪さが同時に、香澄をパニック状態にしていく。
「お願いします……返して……それがないと、私……」
香澄はその瞬間、くらりとめまいがした。
インターフォンに頭をぶつけ、そのまま床に倒れた。
「香澄!?」
香澄はそのまま、床に頭をぶつけた。
無意識に頭ではなく、お腹を庇って。
香澄が
(これ、まずいのかな……)
と思ったのと同時だった。
自分以外の誰かの足音が、家の中に響き渡り始めたのは。
(お父さん……?)
もうほとんど意識を失いかけていた香澄には、その音は迎えの音のようにも聞こえた。
父と祖母が、自分をようやく迎えに来てくれた音だと。
(もう、一人でいなくてもいいの……?)
そう思った時、急に香澄は誰かに抱き起こされた。
(…………え?)
その時感じた香りは、人生で一番好きだと思ったもので、2度と感じてはならないと思った香りだった。
「香澄!香澄!?」
「どう……して……?」
(どうして、家の中に涼先生がいるんですか?)
そう、言葉にするだけの気力も尽きた香澄は、そのまま涼の腕の中で意識を失った。
無意識に、涼のスーツを掴んでいることに気づかないまま——
→6.予想外に可愛すぎる君 に続く……
「香澄?香澄だね?」
「っ!?」
香澄は、驚きのあまり声を出してしまった。
そのせいでインターフォン越しに、香澄が家の中にいることが易々とばれてしまった。
香澄には、この時点でやはり2つ、気になることがあった。
1つ目は、何故「リュウ」を彼が持っているのか。
2つ目は、何故この家に自分がいることが分かったのか。
表札は確かについているけれど、マンションからはとても離れているエリアをピンポイントで当てに行くのはまず不可能だ。
(どうしよう……)
できれば、このまま涼とは距離を取りたいと思っていた。
もしかしたら母親の離婚の件でお世話になることもあるかもしれない。
だとしても、プライベートではもう、これ以上関わりたくないと思っていた。話してはいけないと思っていた。
(でないと……本当に……)
「香澄?そこにいるんだよね」
「あ、あああの……」
香澄は、これが最後という気持ちをこめて、こう言った。
「その手に持ってるノート……!ポストに入れておいてください」
マンションではなく、一軒家である香澄の家。
せめてオートロックだったら、距離もあるのでそこまで香澄は緊張しなかっただろう。
でも、玄関のドア越しとはいえ、10mもない距離に涼がいる。しかも、彼をモデルに描いた、香澄の彼への想いを詰め込んだ「リュウ」も彼の手にある。
その事実が、香澄をより緊張させた。
そのためだろうか。
香澄の体調は、このタイミングで一気に具合悪くなり始めていた。
(立ってるのが辛い……)
でも、モニターを見ていると、涼はしっかりとカメラを見つめているだけ。
香澄の希望を叶える動きはしない。
「お願いします!そのノート、返してください……!」
「香澄、とにかく僕と1回話をしよう」
「返して!返してください!」
もう、この時の香澄には、涼の声が届いていない。
会話が噛み合わない状態がしばらく続いてしまう。
ただ「リュウ」を……これから先死ぬまで自分の恋人でいてくれるであろう存在を、今すぐに返して欲しいという香澄の焦りと、具合の悪さが同時に、香澄をパニック状態にしていく。
「お願いします……返して……それがないと、私……」
香澄はその瞬間、くらりとめまいがした。
インターフォンに頭をぶつけ、そのまま床に倒れた。
「香澄!?」
香澄はそのまま、床に頭をぶつけた。
無意識に頭ではなく、お腹を庇って。
香澄が
(これ、まずいのかな……)
と思ったのと同時だった。
自分以外の誰かの足音が、家の中に響き渡り始めたのは。
(お父さん……?)
もうほとんど意識を失いかけていた香澄には、その音は迎えの音のようにも聞こえた。
父と祖母が、自分をようやく迎えに来てくれた音だと。
(もう、一人でいなくてもいいの……?)
そう思った時、急に香澄は誰かに抱き起こされた。
(…………え?)
その時感じた香りは、人生で一番好きだと思ったもので、2度と感じてはならないと思った香りだった。
「香澄!香澄!?」
「どう……して……?」
(どうして、家の中に涼先生がいるんですか?)
そう、言葉にするだけの気力も尽きた香澄は、そのまま涼の腕の中で意識を失った。
無意識に、涼のスーツを掴んでいることに気づかないまま——
→6.予想外に可愛すぎる君 に続く……