二次元の外には、予想外すぎる甘々懐妊が待っていました
 涼は、香澄のベッドの上で自分の人生を振り返り、改めて思った。

「この子と会うまでは……なんて、つまらない人生だったのだろう」

 と。
 涼は、執事や使用人達に囲まれた、お金に不自由することは決してない家の長男として生まれた。
 言葉を話す前どころか、まだ人の形をしていない頃からの、徹底した英才教育の賜物により、まさに文武両道、かつ顔もスタイルも完璧な神童として涼は君臨することになる。
 涼の両親としては、それが自分達にできる涼への最良のプレゼントだと信じていた。
 彼らもまた、それぞれ立派な家柄から生まれており、素晴らしい教育を受けて成功していた。
 だからこそ、彼らにとっては自分達の親が自分にしてくれたように、ただ愛息子にしてあげたかっただけなのだ。
 それ程まで、芹沢家というのは人格者が作り上げた家……だったはずなのだが、3つ程、彼らにとって大きな誤算があった。
 まず1つ目。
 彼らの腹から生まれた涼という存在が、彼らの想像を遥かに超えた能力と美貌の持ち主であったこと。
 2つ目。
 涼は、簡単な成果では満足できない程、スリルを愛する気質を持ってしまった。それこそ、彼の完璧すぎる能力では味わうことができない、先の読めないもの。
 残念ながら、名作と呼ばれたミステリーも、世界で1番怖いと言われるホラーハウスですら、涼のスリルへの欲望を満たすことは叶わなかった。
 そして3つ目。
 涼は、見た目こそ人当たりが良い柔和な性格だと思われやすい、甘いルックスを持っているが、その中身と言えば人の嫌がる顔を見るのが何より好きだった。
 そのため、暇な時……例えば父母がいない間には、唯一の身内であり近しい存在である拓人への些細な嫌がらせを欠かすことはなかった。
 例えば、彼が大嫌いなカエルのおもちゃを勉強机の引き出しに仕込むということは、至極当然だった。
 そんな涼が最もスリルを楽しんだのは、10代後半から20代前半の恋愛事情。
 これについては……現在の涼は、愛しすぎて仕方がない香澄にだけは聞かせたくないと思っている程、クズエピソードがてんこ盛りだった。
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